かわいさと金額に出る? 招き猫ミュージアムに見る時代の移ろい
招き猫ミュージアム(愛知県瀬戸市)の館内には「おいでおいで」をする招き猫がずらり。白、黒、赤、金……。色、大きさ、素材などが異なる個性的な猫が並ぶ。瀬戸市は、明治時代に日本で初めて招き猫の大量生産を始めたまち。日本の「かわいい」文化の源流がうかがえる。
商売繁盛などの縁起物である招き猫。一般的に左手をあげているのは「人招き」、右手をあげている猫はお金を呼ぶ「金招き」とされる。最近は「人も金も呼び込みたい」と両手をあげる、少々欲張りなものも出てきている。
生まれは江戸時代末期の江戸・浅草あたりとされる。「顔を洗うときに人を招くように見える猫の手が耳の高さを超すと客が来る」という中国の古典がもとになって誕生した。
その体形。初めはすらりとしていたが、時代とともに変わった。徐々にふくらみ、今の2頭身に近い形が定着した。抱える小判も変化し、「千両」「万両」だったのが時代とともに金額が高騰。「百万両」「千万両」となり、「億万両」の小判を抱えるものまで現れた。招き猫への人々の願いと期待は、果てしない。
愛知県には瀬戸市とともに、もう一つの招き猫産地である常滑(とこなめ)市がある。全国で他に大量生産しているのは九谷焼の石川県ぐらいしかなく、愛知県内で全国の8~9割ほどがつくられている。「愛知は招き猫県みたいなものですかね」と同館学芸員の井上美香さんは笑う。
館の収蔵物は、もともと招き猫愛好家の個人コレクション。より多くの人に見てもらおうと2005年、群馬県嬬恋(つまごい)村から瀬戸市に場所を移した。
近年の猫ブームもあってさらに注目される招き猫。海外でも人気が高まっている。館内には、輸出用につくられた傑作がある。持っているのは「ドル」のコイン。目は青く、猫の手のひらは前方ではなく、後ろを向いている。
「欧米では、人を呼ぶときに手のひらを前ではなく、後ろに向けますから」と井上さん。近年は海外で作られるものも出てきた。福を呼ぶ日本生まれの招き猫の世界は広がっている。
(恵藤公浩)
■招き猫ミュージアム(0561・21・0345)=名鉄瀬戸線の尾張瀬戸駅から徒歩8分。開館時間は午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)。休館日は火曜日(祝日の場合は開館)と年末年始。入館料は一般300円、大学・高校生200円、中学生以下は無料。
【関連記事】伝説の猫神社 招き猫1万体、2匹の生き猫神さまも
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。