動物園や水族館の動物を治療する専門チーム発足 資金調達が課題
動物園や水族館の動物を専門的に治療する医師団が岩手県盛岡市で発足した。岩手大動物病院にある診療科を拠点に、各地の獣医師が連携しながら診察にあたっている。診療費の捻出が難しい施設には医師団側で負担することもあり、活動資金を集めている。
11月、動物病院の「動物園水族館動物診療科」で天然記念物ニホンイヌワシの診療があった。医療チーム「未来を創るどうぶつ医師団」理事長で、同診療科の福井大祐准教授(46)ら獣医師4人が担当した。
盛岡市動物公園で飼われている20歳の雄「出羽(でわ)」で、せきや食欲低下などの症状があった。血液検査や内視鏡検査などの結果、気管炎の可能性があることがわかった。動物公園の松原ゆき獣医師(39)は「内視鏡を使えたから原因がわかった。動物公園にはない設備を使い、他の獣医師と意見交換しながら診察できるのは大きい」と話す。
動物園や水族館の飼育動物を専門とする獣医師の数は多いとは言えない。医師団では絶滅危惧種など症例が少ないケースにも対応できるようネットワークを築き、知識を共有・蓄積していく。福井准教授など3人の獣医師を合わせて5人の設立メンバーがいる。
一方、ネックになっているのが運営費だ。岩手大の動物病院にはCT(コンピューター断層撮影)などがあり高度な診療が提供できるが、その分診療費が高くなる。ただ、入園客数の落ち込みなどで資金繰りに悩む動物園や水族館も多い。
医師団では▽症例の優先度▽症例数の多さ▽獣医師の技術・診療への貢献度――などを総合的に判断し、診察費を負担することもある。ニホンイヌワシでかかった約5万円は全額、医師団側が肩代わりした。松原獣医師は「施設が診療費を払うのは大前提だが、資金がなくて診療を受けさせられないケースは少なくない。医師団がカバーしてくれるのはありがたい」。
動物園水族館動物診療科は4月に開設され、フンボルトペンギンやゴマフアザラシなど5例の診察を行ってきた。今後も適切な医療を安定的に提供していくため、医師団はクラウドファンディング(https://readyfor.jp/projects/doubutsuishidan)で資金を募る。目標額350万円には既に達しているが、期限の10日まで追加の支援を受け付けられるようにするという。
福井准教授は「野生動物は貴重な財産。みんなで守るために、持続可能なチーム医療を行いたい」と話す。
(御船紗子)
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