こだわりは「猫目線」 グッドデザイン賞獲得を支える愛猫の協力
猫目線のものづくりに取り組んでいる会社が岩手県盛岡市にある。デザインした商品は社長の飼い猫が「使い心地」を確かめながら改良を重ね、これまで公益財団法人日本デザイン振興会のグッドデザイン賞を4回受賞している。
「nekozuki」のブランド名で商品を展開する「クロス・クローバー・ジャパン」。今年度のグッドデザイン賞を受賞した「まんま台セパレート」は猫用の食器を置く台だ。床にそのまま食器を置くと、猫は首を下げて食事をするため、高齢になると吐き出す回数が多くなる。食器台を利用することで、食事の際のストレスを軽減することができる。
材質には水に強い県産の南部赤松を使用した。社長の太野由佳子さん(42)は「使っているうちに木の色も変化する。猫と一緒に過ごした時間の積み重ねを感じてもらいたい」と話す。
「好きなことを仕事にしたい」と、太野さんは2005年に起業した。当初は国内外から猫用品を仕入れて販売していたが赤字続きだった。ネット販売を通して猫の飼い主から悩みを聞く機会が増え、10年にブランドを立ち上げた。
初めてデザインした商品は猫用トイレの消臭カバー。トイレの砂が散らばりにおいが気になるという客の声に着想を得て、トイレを覆う立方体のカバーを作った。それ以来、30種類以上のオリジナル商品を開発してきた。08年からネット販売に一本化。全国各地から注文があり、売上高は18年3月期決算で8500万円に上る。
太野さんのこだわりは「猫目線のものづくり」。5人の従業員とともに開発した商品は、すべて自身が飼っている猫に試させる。猫が少しでも拒否反応を示せば何度でも作り直す。
製作は磁器職人や木工職人などに依頼している。今まで猫用品に携わったことのない相手がほとんどで「そんなに細かい要求には付き合いきれない」と言われることもあるが、太野さんは猫の反応を撮った動画を見せて説得する。手術後に付ける保護具は販売後、30回以上改良を重ねた。「少しでも体に合わないと猫は敏感に反応する。それを見逃さないようにすることが、よりよい商品につながる」と太野さん。
小さい頃から自宅に猫がいる環境で育った。犬も飼ったことはあるが「猫の気分屋でマイペースなところが好き」。今まで2匹の保護猫も引き取ってきた。「1匹でも多くの猫が健康で幸せに生きていけるように、できるだけのことをしたい」
(藤谷和広)
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