猫の嫌いな爪切りがラクラク 岩手発、驚きの「もふもふマスク」

   猫の長く尖った爪は、家具や人、仲間の猫を傷つける恐れがある。でも、多くの猫は爪切りが嫌いだ。そんな猫の顔に着けるだけで、おとなしくして爪を切らせてくれる驚きのマスクがある。見た目のインパクトも手伝って、話題になっている。

(末尾に写真特集があります)

   話題の品は、爪切り補助具「もふもふマスク」。岩手県盛岡市にある猫用品ブランド「NEKOZUKI(ネコズキ)」の(株)クロス・クローバー・ジャパンが開発した。20152月の発売で、「使える」と評判を呼び、4年間で約11000枚売れたという。

 もふもふマスクは、猫の顔を布で覆い、後ろのマジックテープでとめるだけ。息ができるように口元だけ穴が開いた状態になる。顔に触れる側は、人間の赤ちゃんの肌着にも使われる日本製のダブルガーゼ、表地もオーガニックコットンを使用している。

 大きさは、子猫から成猫まで使えるように5サイズ(SSSM、鼻ぺちゃS 鼻ぺちゃM)あり、4色(レッド、ベージュ、ブルー、グレー)から選べる。

猫マスクを付けて爪を切ってもらう猫社員のぽんちゃん(nekozuki 提供)
猫マスクを付けて爪を切ってもらう猫社員のぽんちゃん(nekozuki 提供)

飼い主の悩み解決に

 開発のきっかけは「飼い主さんの悩みを解決するためだった」と社長の太野由佳子さん(41)は話す。

「爪を切ろうとすると『猫が暴れてかまれたり、引っかかれて大変』『動物病院でも何人かで押さえつけたり、場合によって麻酔を使うのでナーバスになる』など、飼い主さんから悲痛な声が多く寄せられていました。しかし、どこを探しても、悩みを解決できる商品がなかったため、猫と人がストレスなく爪切りできるグッズをゼロから開発することにしました」

 猫は目隠しをすると、おとなしくなる。そんな飼い主の感覚をもとに、その習性を利用することを考えた。では、どうやって目隠しをするか、サングラスのようなものがいいのか、どう顔に固定するか、などを検討。「猫社員」(太野社長の飼い猫)で試すなどして、大きなマスクで顔を覆う形に至ったという。

マスクを横からみたところ
マスクを横からみたところ

 目にぶつからないように、 立体縫製で角ができないように丸くした。素材は呼吸しやすいメッシュも考えたが、爪が引っかかる危険があったため却下。洗いやすい撥水ナイロンも候補にあがったが、最終的には猫への負担を考えてダブルガーゼとオーガニックコットンを採用したという。

 購入者からの意見を受けて、改良もした。

「『鼻ぺちゃの猫にサイズが合わない』というご意見があったので、メルマガでモニターを募集して、お客様の鼻ぺちゃ猫のみなさんに参加してもらい、鼻ぺちゃ専用マスクを追加、完成させました」

かわいい袋に入ったガーゼのマスク(nekozuki 提供)
かわいい袋に入ったガーゼのマスク(nekozuki 提供)

なぜ、おとなしくなる

 でも、そもそも、なぜ猫は爪切りが嫌いで、目隠しでおとなしくなるのか。

 猫専門病院「東京猫医療センター」の服部幸院長は「爪は猫にとって武器であり、木に登ったりする生活必需品。爪はなくては生きてゆけない部位なので、いくら家族とは言え、触られることは嫌がるのだろう」とみる。その猫がマスクをかぶると静かに爪を切らせるのは「目を覆うことで、視界が遮られるため、隠れている気になり安心するのかもしれない」という。

 わが家の爪切り嫌いの猫2匹に、Mサイズを注文して試してみた。好奇心旺盛の若い猫は、遊びだと思ったのか、マスクを被せると、最初は“あれ?どこ?”というように顔を動かした。それでも、すぐにおとなしくなり、楽に爪を切れた。

 一方、とても臆病な年長猫は、顔を覆うこと自体がこわいようで、“外して~”と大騒ぎ。猫の性格によって、向き不向きはあるようだった。

あっという間に爪切り完了
あっという間に爪切り完了

岩手の職人技も生かして

 同社の設立は2005年。太野社長が27歳で起業した。自身で最初に飼った猫「なると」の大きな体に合う爪研ぎや、シャイな性格を考慮したトイレカバーを作りたいと思ったのが始まりだった。

「猫と飼い主さん双方のためのグッズを開発し、今よりずっと安心して幸せに暮らせる社会を作っていきたい」という。

 同社がこれまで開発した商品は約30種類。エリザベスカラーをつけたままでも餌を食べやすい斜め形状にした「まんまボウル」や、木枠の爪研ぎ「がりがりボード」など、グッドデザイン賞を獲得した商品もある。いずれも、機能性と、デザイン性を併せ持つのが特徴だ。

 岩手県のモノづくりの技も大切にし、職人の仕事の確保や雇用拡大にも貢献したいという。マスクには立体縫製の技術、岩手産の木材を使ったトイレカバーには木工技術などが生かされている。

「岩手から世界に発信し、世界中に岩手の良さを広げていきたいと心から思っています」

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は16歳の黒猫イヌオと、2歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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