消えた猫たち 猫の引き取りをめぐるトラブル、虐待目的の場合も

「引き取り詐欺」が疑われるトラブルで行方不明になったオス猫=水野直美さん提供
「引き取り詐欺」が疑われるトラブルで行方不明になったオス猫=水野直美さん提供

 猫ブームの陰で、飼えなくなった猫の引き取りをめぐるトラブルが起きている。「次の居場所で幸せになってほしい」という飼い主の心理につけこみ、現金をだまし取ったとみられるケースも絶えない。猫たちにいったい何が起きているのか。

「新たな飼い主を探す意思はなく、猫は他人に譲ったか、どこかに捨てた」。大阪地裁は5月末、大阪府吹田市で動物愛護団体を運営していた男性に対し、約60万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

 判決などによると、男性は2017年7月、原告の女性から猫7匹を託され、1匹あたり1万円の寄付金を受け取った。女性は本当に飼い主を探しているか不審に思い、猫の返還を求めたのに拒まれたため、猫の保護活動をしている別の女性とともに提訴した。

 男性側は反論せず、判決は女性側の主張に沿った内容となった。女性側によると、この男性が有料で引き取った猫が行方不明になったケースは他にもあるといい、女性側代理人の細川敦史弁護士は「保護活動をうたう団体が金目当てに猫を引き取るとうそをつき、小口の寄付金を稼いでいたのではないか。『引き取り詐欺』とも言える行為だ」と話す。

「引き取り詐欺」が疑われるトラブルで行方不明になったメス猫=水野直美さん提供
「引き取り詐欺」が疑われるトラブルで行方不明になったメス猫=水野直美さん提供

転売したり、虐待したりする「里親詐欺」も

 これとは逆に、保護団体から「ペットにする」として猫を引き取りながら、実際は飼育せず転売したり、虐待したりする「里親詐欺」と呼ばれるケースも起きている。

 大阪高裁は14年、飼う気がないのに猫を引き取ったとして、もらい手の男性に約122万円の支払いを命じた。12年には横浜地裁川崎支部で、虐待目的を隠して引き取った猫を次々に殺傷したとして、動物愛護法違反罪などに問われた男に有罪判決が言い渡された。

 ペットフードメーカーの業界団体「一般社団法人ペットフード協会」(東京)によると、全国の猫と犬の推計飼育数は、2017年の調査で初めて猫が犬を上回った。18年10月現在、猫が約965万匹、犬が約890万匹となっている。

 東京や大阪などで保護された猫とふれあえる7店のカフェを運営する「ネコリパブリック」代表取締役の河瀬麻花さん(44)は、散歩が不要で飼いやすいなどの理由で猫の人気が高まる一方、高齢や転居などの事情で飼えなくなったり、飽きたりした飼い主が猫を手放す事例が以前より目立つようになったとみる。

 猫の殺処分を防ぎたい保護団体や飼育ボランティアなどが引き取っているものの、その後の飼育や予防注射、新たな飼い主探しなどには費用がかかる。このため猫を手放す飼い主は1匹あたり数十万~100万円を請求されることもあるという。河瀬さんは「一概には言えないが、譲渡契約書も交わさず、あまりに安価で猫を引き取るという申し出には注意が必要」と話す。

猫の「引き取り詐欺」に遭わないためには
猫の「引き取り詐欺」に遭わないためには

「本来は最後まで飼うのが飼い主の責任」

 5月に判決が出た大阪地裁の訴訟で原告の一人になり、兵庫県伊丹市などで保護活動をしている「teamねこのて」代表の水野直美さん(61)は、悪質な団体が「愛猫の殺処分を避けたい」という飼い主の心理につけこんでいると指摘。その上で、「引き取り先が信用できるか慎重に確認するべきだが、本来は最後まで飼うのが飼い主の責任。猫を手放すしか方法がないのか、最後の最後まで考えてほしい」と話す。
(遠藤隆史)

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