奄美大島のノネコ管理計画 個人でノネコの譲渡認定者になるには?

奄美大島の中心街にいたTNR済みの猫(ノネコではありません)
奄美大島の中心街にいたTNR済みの猫(ノネコではありません)

 波紋を呼ぶ奄美大島の「ノネコ管理計画」。捕獲されたノネコ(人間の生活圏に依存しない野生化した猫)は1週間後の殺処分が認められており、計画への反対署名は7万筆を超えました。一方でノネコが生態系に与える影響を不安に思う立場からも、多くの反論が出ています。計画が進行する中、捕獲猫を生かすには「譲渡」が必要です。ここでは、個人が飼う目的で譲渡認定者となるまでの流れをお話しします。

(末尾に写真特集があります)

 編集者・ライターの本木です。sippoではおもに猫のために奮闘する方や、保護猫を迎えた飼い主さんへの取材記事を執筆していますが、今回は少し変わって、自身のレポートを。この度、2018年7月の開始から1年になる「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」において、ノネコを引き取るための譲渡認定者となりました。

 現在、「自ら飼養することを目的として譲り受ける個人」として認定を受けている人は、島内に1名、島外では私を含めて2名(認定後に辞退された方を除く)。これらの認定者への譲渡はまだゼロで、個人への譲渡はまったく進んでいません。わが家でもまだノネコを迎えるに至っていませんが、同じように申請したい方に参考にしていただく目的で、認定までの流れを書くことにしました(※本稿は2019年8月28日時点での情報をもとにしています)。

認定には現地で講習会を受ける

 認定までには、大きく2つのステップがあります。

(1) 書類を提出して審査を受ける→(2)奄美大島で譲渡認定のための講習を受ける、です。

認定のためには、「奄美ノネコセンター」で講習を受けます
認定のためには、「奄美ノネコセンター」で講習を受けます

(1)書類を提出して審査を受ける

 個人での申し込みの場合、以下を用意して「奄美大島ねこ対策協議会事務局」に提出します。奄美市役所、または他4市町村の窓口へ持参でもOKですが、私は東京に住んでいるので郵送しました。

●譲渡対象者認定申請書・誓約書(飼養者)
 どちらも奄美市のサイト内のファイルを出力し、手書きで記入、捺印します。

●顔写真入り身分証明書の写し
 私は、免許証をコピーしました。マイナンバーカードなどでもOKです。

●納税証明書、所得証明書
 家から区役所まで少し遠いので近所の出張所で受け取りました(300円×2部=600円でした。自治体に確認を)。6月だったので所得証明書と、納税証明書の年度が分かれましたが、審査にあたっては問題ありませんでした。

●顔写真3枚
 近所にある証明写真機で撮影しました。

●飼育部屋概要
 1枚の紙に、室内全体の写真や、猫のための居場所づくり・トイレ環境がわかるような写真を配置してコメントを添えてまとめました。

 応募にあたって心配だったのが、保護猫の譲渡で多く設けられている「トライアル」ができないことです。うちにはすでに2匹のおばあちゃん猫がいます。高齢猫は環境の変化を受け入れにくいので、2匹の健康を守れなくなる場合は、新しい飼い主さんを探す必要があります。「自ら飼養することを目的として」枠の応募でそれが可能なのか。事務局へ問い合わせたところ、初めての質問だったので審議をかけてもらうことになり、結果を待ちました。

 6月4日に担当職員からOKの回答があり、上の応募書類をそろえて、6月7日に郵送しました。

(2) 奄美大島で譲渡認定のための講習を受ける

 書類審査通過の連絡(電話)があったのは、6月14 日。その日のうちに講習会会場である「奄美ノネコセンター」の地図がメールで届きました。訪問日は基本的には平日ですが、申請者の都合によっては、休日に調整を行うこともあるそうです。

 この頃は、編集者としての仕事が佳境だったため、日程は追って相談としました。校了スケジュールと、飛行機の空き状況、講習会の講師の方の都合などから、訪問日は7月9日となりました。

 奄美大島の希少種や植物を観察するツアーにも参加したい希望と、幼児の息子と初めて離れ離れになるといった事情をふまえ、奄美大島への滞在は1泊としました。午前6時25分発の飛行機に搭乗するため、3時過ぎに起きて始発の電車に乗車。眠いです。羽田からは鹿児島経由で、奄美空港に8時45分着。

 本来であれば空港からバス&徒歩でノネコセンターへ向かうのですが、今回は、空港からバスで奄美市役所へ。職員の方が「センターの場所がわかりにくく交通も不便なので、初めて来島する人は迷うかも」と、市役所前から車に同乗させてくれることになりました。原則は自力で行くことになりますが、迷いやすい方は相談してみるといいでしょう。

10:15空港発の「しまバス」で、山や海を眺めながら、市役所のある名瀬へ
10:15空港発の「しまバス」で、山や海を眺めながら、市役所のある名瀬へ

 センターに到着してからは、講師からノネコを迎えるにあたっての注意点や責任を、職員に認定から実際の譲渡までの流れを聞きました。その後、収容されているノネコの姿も見せてもらって解散です。

 翌日の帰りは、奄美大島から羽田への直行便で、所要時間は2時間5分でした。

 譲渡認定証は、後日郵送で受け取ります。7月27日に届きました。

譲渡認定証に添えられていた送付状
譲渡認定証に添えられていた送付状

 以上が、譲渡認定までに体験した流れです。

認定団体や個人からノネコを譲り受ける方法も

 ここまで読んでいただいて、「大変」「無理だ」と感じた方も多いはずです。ノネコを迎える方法は、個人申請だけではありません。

 すでに、ノネコの飼い主さんを探す目的で認定を受けた2団体と8名の個人がノネコセンターから必死に猫を引き出しています。「奄美大島まで行けないけれどノネコをおうちに迎えたい」という方は、認定団体・個人の里親募集の情報をご覧いただくといいでしょう。

 私のように自分で申請する場合、この先、捕獲の度にメールで送られてくる写真や情報をもとに迎えたい猫を選ぶことになります。希望の猫が見つかったらマッチングのために再びノネコセンターまで行き(委任者を立てて任せるという方法もあります)、さらに後日、空輸(現在はJALのみ)で運ばれてくる猫を空港まで迎えに行く必要があります。空輸は、都内の場合、羽田空港への直行便が1日1便、15:05発、17:10着です。警戒心が強い猫の場合、人になれさせる「馴化」も自力で行います。

 これらの「大変さ」の度合いは、ライフスタイル等にもよるかと思います。私にとっては、マッチングをしたい猫がいても仕事の状況によっては身動きがとれない可能性があることや、ハイシーズンの場合は航空券+宿泊代を捻出できるか、今度は幼い息子を連れて行くのか、などが心配な点です。

 それでも申請した理由は、議論が続く「奄美のノネコ問題」を現地におもむいて考えたい目的もありました。自然や集落などを観察したり、住民の方の声を聞いたりすることは、都市とは違う環境や、立場によって異なる動物観を慎重に見つめる術として役立ってくれるように感じています(くわしくは現地レポート記事:「奄美大島の『ノネコ問題』。猫と希少種たちがともに生きる道へ」へ)。

 今もまだ山の中にある猫たちの命が、あたたかい心とお家に迎えられますように。

※捕獲したノネコの譲渡の運用が1年経過するにあたり、「奄美大島ねこ対策協議会」では、さまざまな方から寄せられている意見を参考に、譲渡までの流れの見直しを検討しているそうです。今後変更になる点があるかと思いますので、本稿はあくまでも体験談として参考にしてください。申請にあたっての詳細は、奄美市のサイトもご確認ください。

【関連記事】 「奄美のノネコ問題」解決の道は 漫画原作者・夏緑さんに聞く

本木文恵
1983年生まれ。編集者・ライター。1級愛玩動物飼養管理士。2007年より猫に関連する雑誌・書籍の編集や執筆を行う。2017年に独立。担当した近著に『保護ねこのきもち(ベネッセ・ムック)』、「with PETs(日本愛玩動物協会の機関誌)『猫を知る』特集号」、『ねこがかわいいだけ展 公式ねこ本』など。愛猫はキジ白と茶白の2匹。人と猫のためのwebマガジン「neco-necco(https://neco-necco.net/)」運営。

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