猫と猫好きを虜にする「ちゅ~る」 ヒットの裏に社長の思いつき

「CIAOちゅ~る」にかぶりつく筆者の同僚の愛猫ジャッキー=佐藤陽撮影
「CIAOちゅ~る」にかぶりつく筆者の同僚の愛猫ジャッキー=佐藤陽撮影

「ちゅ~る ちゅ~る CIAO(チャオ)ちゅ~る♪」の歌とともに、細長い包装の開け口に必死でかぶりつく猫たち。猫好きにはたまらないCM動画、テレビやネットで見たことがある人も多いのでは?

 「CIAOちゅ~る」は猫用おやつ。マグロやカツオ、鶏ささみなどをペースト状にした国内初の液状タイプだ。200年以上の歴史があり、ツナ缶などで知られるいなば食品のグループ企業、いなばペットフード(静岡市)が2012年に発売した。

 猫3匹と犬1匹を飼う稲葉敦央社長が、自ら愛猫にごはんを与えるうち、缶詰などでは難しい「手を汚さず、じかに食べさせられるものを」と思いついたそうだ。猫好きの心をくすぐって、「猫のおやつ」市場をリードしている。

 商品自体も画期的なところへ、さらにヒットを呼んだわけがある。業界団体のペットフード協会によると昨年の国内の猫飼育数は微増にとどまった。でも一緒に遊びたい猫好きは多く、動画をネットにアップする人も増えている。

 ちゅ~るのCM放送を15年に始めると、まねた動画をSNSに投稿する人が相次いだ。スタジオで撮るよりいい表情も多かったため、CM用動画の公募を始め、17年には専用の動画作成アプリ「ちゅーるメーカー」も配信。今では募集のたび、国内外から1万点以上が寄せられる。

CIAOちゅ~るを試食する(左から)開発販促チームの織茂美樹子さん、平本恭子さん、峰澤亜咲実さん=東京・日本橋
CIAOちゅ~るを試食する(左から)開発販促チームの織茂美樹子さん、平本恭子さん、峰澤亜咲実さん=東京・日本橋

 私の職場の愛猫家たちに聞いても「封を開けるとCMさながらに食いつく」と口をそろえる。原材料は魚・肉などの主成分に糖類や植物性油脂などを加え、水分が約9割を占めて1本約7キロカロリー。「他に何か特別なものを入れているわけではありません」とマーケティング部次長の今井一聡さん(45)は言う。

 なぜこんなに魅力が? 猫用ツナ缶とちゅ~るを実際に食べてみたが、人間用と変わらない食感の缶と違い、ちゅ~るは流動食にも似て、これは、うーん、猫になってみないとわからない味わいかも。

「なめるのが好きな猫向けに粘度がちょうどよかったのと、人間用と同じ生産管理体制で作っているためでしょうか」と今井さん。いなば食品と同じ工場で、別ラインではあるが同じ流れで作っている。「世界の猫を喜ばす。」と工場の壁に掲げ、04年に進出した中国をはじめ、海外での販売も広げたいという。
(藤えりか)

増田すず菜さん 開発販促チーム課長

開発販促チーム課長 増田すず菜さん
開発販促チーム課長 増田すず菜さん

地元・静岡の食品企業に、と入社しました。新製品を社員が毎回試食するため最初は驚きましたが、今では普通に食べています。最近まで飼っていたワンちゃんや知り合いの猫ちゃんを思い浮かべながら、おいしく食べられる健康的な味、飼い主が開けやすく与えやすい形状を追い求めています。(2008年入社、33歳)

カンパニーメモ
江戸後期の1805年ごろに静岡で始めたかつお節製造から発展した1936年創設の稲葉缶詰所(現・いなば食品)がルーツ。キャットフード製造は58年に米国輸出向けに始め、2004年中国進出。
朝日新聞
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