「ねこがよろこぶ活動」で「ねころ部」 生徒が真剣に愛護活動

里親を探す会で保護犬の世話をするねころ部の生徒たち
里親を探す会で保護犬の世話をするねころ部の生徒たち

 JR根岸線・港南台駅から徒歩10分。緑豊かな高台に立つ山手学院中高(横浜市栄区上郷町)に、風変わりな名前の看板が掛けられた部室がある。

◇     ◇

「ねころ部」。決して生徒が寝転んでいるわけではない。「ねこがよろこぶ活動」でねころ部。顧問による野良猫の保護活動をきっかけに誕生した、動物愛護に関わる活動をするまじめな部活だ。

 部室に入ると、生徒たちが和気あいあいと手芸に取り組んでいた。文化祭で売り、そのお金は動物愛護団体に寄付する。活動は週2回。地域で飼育している猫の世話をしたり、文化祭の発表に向けた勉強会をしたりする。

 珍しい名前にひかれて入部する生徒もいる。将来獣医になりたいという田辺大翔君(14)も、その一人。「面白い名前の部活がある」と入部した。「のんびりしていて良い部活です」
 部をつくったのは顧問の岡本ジュリー先生。岡本先生が校内でしていた野良猫の保護活動がきっかけだ。

 1986年に山手学院に赴任してから2、3年が経った頃、校内に野良猫が住んでいることに気付いた。不妊・去勢手術をしていないため、数はどんどん増えて最大で37匹になった。

「野良猫が増えてはかわいそう」と猫の捕獲の仕方などを調べ、自費で野良猫の不妊・去勢手術を受けさせ始めた。

 近所で野良猫を増やさないための活動をしている人と知り合い、地域の団体を作った。団体の活動は、校内でもした。すると、興味を持った生徒が活動について質問してくるようになり、次第に一緒に活動する「部」になったという。

里親を探す会では、引っ越しや入院といった飼い主の都合で飼えなくなった犬や猫の里親を募集している
里親を探す会では、引っ越しや入院といった飼い主の都合で飼えなくなった犬や猫の里親を募集している

 月に2、3回、猫や犬の里親を探す会に参加するのも部活動の一環だ。飼い主のいない猫や犬の里親を探すNPO法人「アニマルレフュージ関西(ARK)」が開催している。岡本先生は、山手学院周辺の野良猫が減ってきた頃から、「外にも目を向けよう」と野良猫の保護以外にも活動を広げ、2012年から同法人の理事を務めている。

 里親を探す会に「猫や犬の飼い主になりたい」という人が来ても、すぐになれるわけではない。過去の動物の飼育歴や、仕事の時間などの聞き取りが必要だからだ。里親になりたいと希望する人について、ARKが「飼っても問題ない」と判断するまでには、通常1カ月ほどかかるという。

 岡本先生は、「動物を捨てると、どれだけ次の飼い主を探すのが大変なのか知ってもらいたい」と里親を探す会に生徒を参加させる理由を説明する。

 3月中旬に東京都内で開かれた里親を探す会には、部員3人が参加した。

 会では、飼い主の引っ越しや入院といった事情で引き取られた犬や猫の写真が貼り出され、里親を募る。この日初めて参加した部員の栗原沙綺さん(14)は、保護されている犬をなでながら、「こんなに良い子なのに何で捨てられちゃうんだろうって考えちゃいます」。

山手学院の「ねころ部」の部員たち。後列左から2人目が岡本ジュリー先生
山手学院の「ねころ部」の部員たち。後列左から2人目が岡本ジュリー先生

 部活を通して、生徒たちの動物愛護に対する意識は変わっていくようだ。部長の石崎月乃さん(16)は元々猫を3匹飼っていた。「入ってみて、多くの動物が殺処分されている現状を知ることができました」。里親を探す会にこれまで10回ほど参加し、「(飼い主である)自分の責任の重さを感じます」。

 部の卒業生には、獣医師として活躍する人や、犬・猫の一時保護をしてくれる人、里親になる人もいる。

 岡本先生はいう。「『動物と共存する』とは、動物のニーズを理解して一緒に暮らすこと。それを学んで、他の人に発信できる生徒になってほしい」

(安藤仙一朗)

朝日新聞
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