幸運を呼ぶオッドアイの猫 商店街を散歩、人と縁を結ぶ
沖縄市一番街商店街にある優心は、趣味と縁起物のお店だ。店頭のテーブルで優雅に寝そべるのが、この店の「幸運を呼ぶ猫」こと、チロ(6歳、メス)。右目は緑色、左目は青色のオッドアイだ。
青い目を持つ白猫は、遺伝的に難聴が出やすいと言われる。チロも耳が聞こえない。頻繁に店主の新川秀雄さんを目で追う。
「私がどこで何をしているか、見ているんでしょうね」(新川さん)
チロは、2012年1月10日、お店近くの角に捨てられていたところを新川さんに拾われた。生後数週間ほど、低体温症で弱っていた。新川さんは「お正月だから」と少しの間のつもりで預かり、カイロで温め、世話をした。
「しばらくして元気を取り戻してね。同時に、耳が聞こえていないとわかった。だから、うちで飼うことにした。助けた以上、責任を持たないとね」(同)
以来、新川さんと一緒にチロは店頭に立つ。オッドアイの看板猫は程なく商店街のアイドルになり、半年後には地元紙に載った。ミュージシャン・斉藤和義と同じ写真に納まったこともある。
「オッドアイの猫は幸運を呼ぶ」といわれているのを知ったのはその頃だ。実際、「元気が出た」「宝くじが当たった」などの声が寄せられるようになった。
昨年は、全国誌の取材も受けた。チロを訪ねる人はさらに増え、新川さん、一計を案じた。チロのブロマイドを1枚100円で売り始めたのだ。売り上げはすべて、チロのごはんとおやつ代になる。新川さんの思いやりだ。
「チロも自立しないとね」(同)
新川さんとチロの毎日は優しい。チロは毎朝、新川さんのおなかに飛び乗って起こす。シャッターを開け、午前10時に開店。チロは店前に佇み、行き交う人を眺めて過ごす。15時にはおやつの催促。おやつを済ませたら、散歩の時間だ。
「ほんの少しの距離ですけれど、商店街の端から端まで歩くのが好きみたいです」(同)
尻尾をピンと立てて進むチロは、新川さんをリードしているようだ。
店の脇には、チロの家がある。「冬の間は寒かろう」と段ボールを新川さんが工作した。色を塗り、中には暖房装置を仕込んだ。クリスマス用に電飾も設えた。
新川さんは、チロがつないだ思い出の手紙や記事を、大切に保管している。チロが来てから、新川さんにはどんな幸運が?
「人との出会いが増えて、たくさんの縁が運ばれてきますよ。金運だけは、あまり来ないかねえ(笑)」
新川さんを見上げ、チロがニャーンと鳴いた。
(編集部・熊澤志保、渡辺豪、写真・今村拓馬)
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