殺処分予定の犬、高齢者施設でセラピー犬に 訓練費支援に課題
殺処分予定だった大型犬が、「セラピー犬」としての訓練を受け、12日から水戸市の高齢者施設で新たな生活をスタートした。動物の持つ癒やしの力を発揮させると共に、犬の殺処分ゼロにつなげる「一石二鳥」の取り組みだ。だが、訓練費の支援をどうするかなど課題も残る。
「あら、かわいい」「おとなしいのね」。水戸市のケアハウス「ハートピア水戸」。前庭に集まった入所者や職員に雄の大型犬「オール」が近づくと、お年寄りたちに笑顔が広がった。
施設を運営する社会福祉法人「愛(めぐみ)の会」では、以前も複数の施設で犬を飼っていた。入所者に好評だったことから、今回、オールを譲り受けた。今後、入所者との触れあい、散歩の同行などの「仕事」をさせていく予定という。木村都央(さとなか)理事長は「動物が人を笑顔にする力はすごい。入所者だけでなく、地域や隣接する保育園の子どもたちも含めて、かわいがってもらえるようにしたい」と話す。
オールは雑種で推定3歳。詳しい年齢が分からないのは、捨てられて茨城県動物指導センター(笠間市)に保護されていたからだ。保護犬は、一定期間に引き取り手がないと殺処分される。大型犬のオールは敬遠されていたという。
オールにとって幸運だったのは、犬猫の殺処分ゼロを目指す茨城県の活動支援事業で、セラピー犬の育成がプロジェクトとして認められたことだ。昨年8月、企画提案をした訓練施設「ワンダフルパートナー」(水戸市)に引き取られ、半年間にわたって訓練を受けた。
訓練をした礒崎正悟代表によると、元々おとなしい性格だった上、人に触られてもいらだたない▽むやみにほえない▽座る・伏せなどができる、といったしつけにより、セラピー犬に向いていたという。
県内では、2016年12月に犬猫の殺処分ゼロを目指す条例を制定したことなどもあり、犬の殺処分の頭数は減っている。ただ、「民間団体の力で引き取り先を何とか見つけているだけで、犬たちの力を活用することはできていなかった」(条例制定に携わった県議)という。
このため県議会のいばらき自民党が中心になり、センターに収容された犬たちを社会で活用するなどの取り組みに補助金を出す仕組みを17年度に立ち上げた。セラピー犬養成もこの補助金を使って行われた。
ただ、課題も残る。今回の訓練にかかった費用は約60万円。県からの補助金は10万円だ。残りは水戸市内でドッグカフェ、シュナカフェを営む「フレックス」が寄付することで何とか事業化にこぎ着けた。礒崎さんは「センターから引き取る犬の訓練は、医療費などを含めるとどうしても費用がかさむ」と話す。
県生活衛生課は「センターに来る数を減らす『入り口対策』と共に、どう譲渡につなげるかの『出口対策』が必要」とした上で、「癒やしの役目を与える試みは大変ありがたい。将来的に、費用を含めた対応を充実させていければ」と話す。
(重政紀元)
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