猫殺処分ゼロへ和歌山が本腰 人口10万人あたりワースト2位
殺処分される猫を減らす取り組みが和歌山県内で本格化している。野良猫が新たに子猫を産まないようにする不妊・去勢手術を定着させようと、県や和歌山市、獣医師が本腰を入れはじめた。人口10万人あたりの殺処分数が全国ワースト2位の和歌山県で「殺処分ゼロ」が達成できる日は来るのか。
県は2016年度、強い繁殖力を持つ野良猫の増加に歯止めを掛けようと「不幸な猫をなくすプロジェクト」事業をスタート。自治会などが餌やりのルールなどを定めた地域猫対策計画を策定し認定を受けると、指定された動物病院や県動物愛護センター(紀美野町)で不妊・去勢が無料でできる「手術券」を交付してきた。
この制度を利用し、19年1月中旬までで計1208匹に手術が施された。初年度から需要が多く、今年度はすでに当初予算1200万円で見込んだ600匹分の手術券をすべて交付したという。県食品・生活衛生課の担当者は「県民の関心の強さを感じる」と話す。
県内の殺処分数は年々減少しているが、それでも17年度は1972匹。同課によると、都道府県別でワースト6位、人口10万人あたりの殺処分数は208.8匹で、全国ワースト2位だ。
和歌山市は19年度に新設する動物愛護センターで、野良猫などの不妊去勢手術ができる体制を整える。手術に必要な器具購入費の一部を、インターネットを通じてふるさと納税として寄付を募ったところ、目標額(1800万円)を大幅に上回る約2457万円が寄せられた。
市保健所動物保健班の広岡貴之班長は「寄付は大変ありがたい。地域猫だけでなく、保健所が保護した成猫に不妊去勢手術ができれば、市民に譲渡できるチャンスが広がる。殺処分ゼロを目指してさまざまな努力を重ねたい」と話す。
手術専門の動物病院、4月開業へ
ただ、行政が限られた予算を投じて行う手術のペースでは「野良猫が繁殖するスピードには追いつけない」と、「城下町にゃんこの会」(和歌山市)の奥康子代表は懸念する。
同会は、野良猫を捕まえ(Trap)、不妊・去勢手術をし(Neuter)、元の場所に戻す(Return)「TNR活動」に取り組む。計約500匹の猫の譲渡にもかかわった。奥代表は「手術の助成を受けるには計画の策定などの手続きが複雑。個人が自費で手術を受けさせようと思っても、1万円を超えるため二の足を踏んでしまう」と説明する。
そんな中、会の活動に共鳴した獣医師、村上聡さん(44)が4月、和歌山市内に猫の不妊去勢手術専門の動物病院を開業する。一般診療をせず設備投資の負担が軽いため、雄5400円、雌8640円で実施できるようにするという。
村上さんは「殺処分だけでなく、繁殖して路上死する猫が非常に多い。不幸な命を増やさないため、手術の重要性を多くの人に知ってほしい」と話している。
(白木琢歩)
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