農業高の犬「リン」、アイドル歴15年 卒業式にも参加
卒業写真のあの犬は、かわいい目をしてる。県立高知農業高校(高知県南国市)に、公認のアイドル犬がいる。雌の「リン」。同校にやってきて15年がすぎ、卒業アルバムなどにも登場するようになった。
もうすぐ別れの季節がやってくる。3月1日の卒業式。リンは首に「卒業おめでとう」のプレートをさげて、会場の体育館前の花道に座る予定。3年間、一緒に学んだ仲間を見送る。
普段の仕事は学校行事への参加だ。農産品を販売する学校のふれあい市では、首に「苦情係」のプレートをぶらさげ、訪れる人を歓迎する。入学式では「入学おめでとう」、卒業式では「卒業おめでとう」の文字をぶら下げ、笑顔で和ませる。
2003年の初夏、段ボール箱に入れられて川に流されていたリンを、近くの小学生たちが助けた。生まれたばかりの子犬で、捨てられたようだ。
小学生は高知農に持ち込んだ。当初、学校側は「しばらく預かり、引き取り手がなかったら保健所へ連れていくつもりだった」。
だが、畜産総合科の女子生徒が「かわいい」と世話を始めた。アニメのアンパンマンで流れる歌「勇気りんりん」から「リン」と名付けた。当時の教頭が「生物活用の教科がある。授業で犬の性格やしつけを学ぶことも大切だ」と学校で飼うことを認めた。
目が丸く人なつっこい。食事の際に「ゴハン」と聞こえる声を出す。リンはすぐに人気者になった。学校で飼育していた母豚が死ぬと、リンは残された子豚に乳を飲ませるしぐさをして母親代わりをした。やさしい気性だ。
リンは、昼間は畜産総合科の職員室、夜は畜舎の中の犬小屋で暮らす。朝や放課後にはリンに会いに生徒たちが来る。夕方は、生徒が交代でリンを連れて学校の周囲を散歩する。リードを握る2年生の恒石笑(えみ)さん(17)と川西那桜(なお)さん(16)は「雨の日にカエルを見つけると夢中で追いかけるので大変」と笑った。
この15年間で、病気もした。2年前の秋、子宮に悪性の腫瘍(しゅよう)が見つかった。手術や入院の費用は生徒や教職員、保護者からのカンパがすぐに集まった。
リンの元に時々、東京から宅配便が届く。ファンからの餌のドッグフードの贈り物だ。近所からも多くの人が餌を持ってくる。世話をしている松岡秀和教諭(49)は「リンも人間でいうと高齢者。一年でも長生きしてほしいです」。
卒業生も時々、会いにくる。1月9日、昨春卒業した会社員藤岡菜央さん(19)の姿があった。体育祭で桃太郎の仮装をしたリンの姿が忘れられないという。
「リンは私の青春そのものです」
(笠原雅俊)
【朝日新聞デジタルに動画】
https://www.asahi.com/video/articles/ASM1B5X33M1BPLPB00Y.html
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