ミルクを与え赤ちゃん猫を養育 ミルクボランティアの苦労と喜び
生まれたばかりの子猫にミルクを与えて育てるボランティア「ミルクボランティア」。何をするのか、誰が出来るのか。猫の保護活動に携わり、子猫の育て方セミナーも開催している京都市の阿部令子さんに教えてもらった。
ミルクボランティアの仕事とは?
ミルクボランティアの相手は生まれたての子猫。人間の赤ちゃんと同じように、授乳から排泄までこまめに世話をしなければならない。
生後2週間までの子猫は、2時間おきに授乳が必要で、たとえ真夜中であっても子猫を起こしてミルクを飲ませる。さらに、あまりミルクを飲んでくれない子猫の場合、1時間おきにミルクを飲ませる必要がある。
この時期の子猫は栄養が必要で、昼夜関係なくミルクを飲んで成長する。生後2週間以降は、お腹がすけば子猫からせがみ、だいたい3~4時間おきになるという。その後、子猫が成長すると、ミルクの間隔は最大6時間になるため、ボランティアも睡眠時間が確保できるようになるそうだ。
このためミルクボランティアは、睡眠が小刻みになり、仕事を持っている人にはなかなか難しい。また、体力も必要だ。
自治体によっては、生まれたての子猫ではなく、生後1ヶ月以降の子猫のミルクボランティアを募集しているところもあるという。
小さな子猫は死亡することもある
野良猫から生まれた子猫は、母猫や兄弟と離されて保護されると、突然ひとりぼっちになって不安になる。その上、寒いとか、痛いとか、のどが渇いたとか、さまざまな不満を抱えている。
そこでミルクボランティアがまずすべきことは、やわらかなベッドを用意し、お風呂に入れて、自分と子猫の匂いを同化させることだという。体が温かくなって、同じ匂いがする人をママだと思い、やっと子猫は安心するという。こうしたコツを知ると、生まれたばかりの子猫の世話も可能になる。
ただ、子猫は非常に敏感なため、哺乳瓶を変えなくても、ミルクをあげる人が変わるだけで、飲まなくなることがあるという。また、ミルクのあげ方が変わると、なかなか乳首がうまく口にはまらず、飲めなくなる。さらに何らかの事情でミルクを十分飲めない子猫が虚弱体質だった場合、どんなに一生懸命育てても、生後2週間までに死んでしまうこともあるそうだ。
「子猫が好きで始めたボランティアなので、子猫が亡くなってしまうと、ボランティアは精神的に大きなダメージを受けます。体力に加え、精神的にも厳しいため、なかなかミルクボランティアになる人がいない。でも、子猫が亡くなるのは、決してボランティアのせいではありません。私は、『それは、あなたのせいじゃない』と、伝えたい」
生後2週間を過ぎると、子猫の体調も安定し、生後1カ月まではミルクを飲んですくすく育ち、2カ月目からは離乳食を食べるようになる。その成長過程に寄り添えるのは、ミルクボランティアの大きな喜びでもあるのだ。
どうしたらミルクボランティアになれるのか
子猫のミルクボランティアは、募集している自治体によって募集時期や条件などは異なるが、神戸市の場合はこうだ。
神戸市動物管理センターが保護した授乳が必要な猫(概ね生後4週~6週齢)を世話するミルクボランティア を募集している。兄弟そろって飼育してくれる人が望ましく、預かる期間は2~4週間、自力で固形のフードが食べられるようになるまで飼育する。4~5時間おきの授乳や離乳食の給餌、排泄の介助、健康の観察、社会科のためのふれあいや遊び、毎日の成長の記録(日誌)を任される。
飼育に必要なケージ、ミルク、離乳食、ペットシーツなどは市が用意するそうだ。具体的な飼育法についても詳しく教えてもらえるという。
原則、2カ月齢を目安に子猫は市に返還され、その後、市が譲渡先を募集するという。
ミルクボランティアに応募するには、原則留守時間がないこと(買い物や短時間の外出は除く)、ペットが飼える住宅であること、ボランティア開始前に自宅訪問調査を行うことに同意するなど、いくつかの条件を満たしている必要がある。
阿部さんは、万が一、預かった子猫が死亡しても、そのことに責任を感じないでほしいと話す。誠意を持って育てても、虚弱体質で亡くなってしまうこともある。困った時は自治体が相談に乗ってくれるので、決して一人だけで育てるわけではないという。また、猫だけでなく、犬のミルクボランティアを募集している自治体もあるそうだ。
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