自宅までお迎え、車でペットを火葬 移動式火葬の利点と不安

 ペットの葬儀で最近増えているのが、移動式の火葬だ。葬儀場が遠い、遺体を運ぶ車がないなど、さまざまな事情で移動式火葬車をお願いする人も少なくない。後悔することがないように愛犬、愛猫を見送り、弔うにはどうしたらいいか。移動式火葬と、ペットのお墓事情について取材した。

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 移動式火葬は、炉を取り付けた車で、飼い主宅まで出向いて犬や猫を火葬してくれるサービス。サービスの一般的な流れはこうだ。

 まず、火葬車が自宅へやってくる。ここでペットを引き渡すので、飼い主さんとのお別れはこの場が最後となる。

 引き取られた遺骸はたいていの場合、自宅から少しし離れた、目立たず迷惑にならない場所へ移動して荼毘(だび)にふされる。きちんとした設備を整えた業者であれば、煙やにおい、炎が出ることはなく、周辺への影響もほとんどない。

 収骨(お骨上げ)は、飼い主が車のいる所へ出向く場合もあれば、お骨を業者が自宅へ運んでくれる場合もある。

 中には「散歩の途中、よく遊んだ広場で荼毘にふしてあげて欲しい」という要望のもと、仲の良かった飼い主仲間に見守られて火葬された、というケースもあるという。

いつかは必ずやって来る別れ
いつかは必ずやって来る別れ

中には悪質なケースも

 この移動式火葬について、一般社団法人「全国ペット霊園協会」理事で、「ペット葬祭センター 日本ペットセレモ」(横浜市)社長の伊藤正和さんは指摘する。

「移動式火葬を選択する場合も、ペット霊園やペット葬祭会社と同じように、しっかり検討して選んでほしいと思います」

 まず大前提として、固定式のペット葬祭会社やペット霊園は、自治体への届け出事業だ。誰もが勝手に霊園や火葬場、葬祭場を作ることはできない。決まりごとの内容は自治体によるが、必ず届け出をし、一定の基準を満たして作られている。

 一方、移動式火葬車の営業に届け出は不要。極端に言えば、火葬炉のついたトラックを購入すれば、誰でもすぐに開業できるということになる。

 中には悪質なケースもある。消費者センターには、こんなケースも報告されている。

「大型犬の火葬を依頼した。亡骸を火葬炉に入れて点火した後に、法外な追加料金を請求された。火葬にするペットの体重に応じて金額が決まると言い張り、拒めば『生焼けのまま犬を返す』『遺骨は渡さない』など、脅迫まがいのことを言われた」

 そんなことに遭わないためには、どうしたらよいのか。伊東さんは説明する。
「信頼できる移動火葬の業者であれば、まず大抵はお寺とタイアップしています。お坊さんが派遣されて来て読経してくれたり、遺骨をお寺に納骨できる、といったケースです。火葬というのは技術のいる仕事なんです。移動式ならば、炎や煙がでないようにしないといけない。そのために必要なのは、それだけの能力のある火葬炉と火葬する人間の技術。それがきちんとあるかどうか…。なかなか個人では確かめようもありませんが、一般のペット葬儀業者同様、事前に電話で問い合わせて、相談に乗ってもらって様子を見るのがおすすめです」

トラックに炉が取り付けられ火葬車(キャットPaPa提供)
トラックに炉が取り付けられ火葬車(キャットPaPa提供)

猫専用の火葬場を造った移動火葬業者

 東京都世田谷区の常福寺には、猫専門火葬施設「キャットPaPa」が設けられている。もとは今から13年前、移動火葬の「ペットPaPa」として始まったビジネスだという。

 社長の高橋達治さんが移動火葬業を始めたきっかけを振り返る。

「私自身、ペットを亡くした経験があります。学生時代、昼間忙しくて、夜しか時間が取れなかった。それで愛犬の葬儀に立ち会えなかったんです。ペット火葬は人対人のサービスなんです。動物はすでに亡くなってしまっているから、我々には何もしてあげられない。けれど、ペットを亡くして悲しんでいる飼い主さんには寄り添ってあげられる。私は、もとは旅行業で働いていたので、人へのサービスならできるな、と思いました」

荷台部分に取り付けられた炉(キャットPaPa提供)
荷台部分に取り付けられた炉(キャットPaPa提供)

 では、なぜ移動火葬の業者が固定式の火葬場を作ったのか。

「犬と猫の移動火葬をするうち、猫の特殊性に気付いたんです。猫の場合は家猫だけでなく、野良猫や地域猫など、複数の方々が共同でお世話しているケースも多いんです。犬と違って多様な猫と人の共生をカバーできるお別れがあってもよいのではと考えました」

 キャットPaPaはこぢんまりとした火葬場だ。希望すれば僧侶による読経も受けられる。簡素だが祭壇もあり、お世話に携わった人たちが集まってお別れすることもできる。

 境内には猫専用の納骨堂やガーデン式ペット霊園(こちらは犬も可)があるので、遺骨はそこに納めることもできる。保護猫や被災動物については、料金の相談にも応じているし、収益の一部を猫の保護活動の団体に寄付もしているという。

 常福寺では、春には猫、秋には犬猫の供養祭も開いており、動物愛護団体や猫作家がブースを出したりして、ちょっとしたお祭りにもなっているという。

友人葬の祭壇(キャットPaPa提供)
友人葬の祭壇(キャットPaPa提供)

一緒に入れるお墓、ずっと置けるモニュメント

 火葬を終えると、次はペットのお骨をどうするかが問題になる。最近では「愛犬・愛猫と一緒のお墓に入りたい」という要望も増え、ペットとの合葬を認める霊園やお寺も増えているという。

 前出の全国ペット霊園協会理事の伊東さんも指摘する。

「動物のお骨と一緒に入ることができるのは、民間霊園に多いですね。お寺が運営している霊園では、宗教上難しい。ですが、民間霊園は無宗教が多いですから、ペット合葬でも施設が許可した区画であれば問題ないというわけです」

 霊園では、宗教に応じて区画を分けているところが多い。ペットと合同のお墓の場合は、先に死んだペットの遺骨を入れるのではなく、飼い主が手元に置いて供養し、飼い主の死後、飼い主のお骨と一緒にお墓におさまるのが一般的だ。場所によっては墓誌(お墓に誰が眠っているかを書き出すリスト)にペットの名前を記してもよい、というところもある。

 また、人間のお骨と違い、ペットのお骨は庭などに埋葬しても問題はない。一時期はガーデングッズとしてペット用の墓碑なども売られていたが、「マンション暮らしの人が増えて庭が少なくなり、今ではあまり見かけませんね」と伊東さんはいう。

墓石タイプのモニュメント
墓石タイプのモニュメント

 その代わりに注目を集めているのが、石で作ったモニュメントに遺骨を納めて飾るタイプの墓石「ワン・ハートストーン」だ。

 これは写真などをもとに、生前のペットの様子そっくりにつくったモニュメントのこと。お腹部分には遺骨(の一部)が収められるようにできている。家に置いて飼い主の心を癒すだけでなく、飼い主の死後、ペットのお骨が一緒に入れない霊園であっても、飼い主の墓石の脇にオブジェとして置いておくことができる場合もある。

 ペットは大切な家族。最後まできちんとお世話するのはもちろんだが、その死を看取り、弔うところまでが飼い主の責任だといえる。

「ご自身の幸せと納得感が何より大切。そのためにも、ペットが元気なうちにいろいろ調べて、比較検討するのがおすすめ」と、伊東さんも高橋さんも口をそろえる。

 ペットに何かあってからでは、飼い主の精神状態も平常とはいいがたい。いざというときのために前もって備えておくことが大切といえそうだ。

浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。
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