野良猫の不妊・去勢手術だれが担う?ボランティア団体活動終了へ

「猫の不妊手術推進の会」の手術場で手術を行う獣医師ら
「猫の不妊手術推進の会」の手術場で手術を行う獣医師ら

 富山県内で10年近く、ボランティアで野良猫の不妊・去勢手術に取り組んできた団体がある。手術に協力してきた獣医師が来年で退くことになり、団体の活動も終える予定だ。他に同様の活動をする団体などはないといい、手術が滞って野良猫が増えれば、殺処分も増える可能性がある。団体は「ボランティア頼みは限界」と、県などに積極的な対応を求めている。

手術に協力の獣医師、来年で退くことに

 今月初め、富山市内の「猫の不妊手術推進の会」の事務所にある手術室で、獣医師ら3人が猫の不妊と去勢の手術を行った。3日間で計約170匹を手術。大半が県内と隣県から持ち込まれた野良猫だ。

 猫は繁殖力が強く、環境省の資料によると、メス1匹から2年で80匹以上を産むことも可能だという。野良猫が増えれば、地域で汚物や鳴き声の問題が出る。子猫が保健所などに持ち込まれると、飼い主が見つからなければ殺処分されることになる。

殺処分数は10年前の6分の1以下に減少

 同会は、山口輝男代表(71)=富山市=が約25人のボランティアと運営。神奈川県大和市の山口武雄獣医師(70)の協力を得て、10年ほど前から年間で計800匹超を手術してきた。持ち込んだ人に払ってもらう手術費は相場の3分の1ほどという1匹8千円(飼い猫は1万5千円)。山口代表によると、手術数は徐々に減少していて「野良猫自体が減ってきたのではないか」とみる。

 県内の犬や猫の殺処分も年々減り、県によると昨年度は306匹(猫285匹、犬21匹)と10年前の6分の1以下に。山口代表は「長年の成果」と話す。

 しかし、山口獣医師が来年夏で退くことになり、団体の活動にも区切りをつけることにした。採算面や扱いの大変さなどから野良猫の処置に消極的な獣医師もおり、後任を見つけるのは難しいという。県が犬や猫の殺処分を将来的にはゼロにすることを目指していることもあり、山口代表は「個人のボランティア精神頼みでは限界。県や県獣医師会が対応を考える必要がある」と指摘。野良猫の不妊や去勢手術を県が中心になって進めるべきだと投げかける。

 県獣医師会の担当者は「対応を怠れば、殺処分数が増えかねない」との考えだが独自の対応は「難しい」という。「県が音頭を取って、助成制度を含めて安定したやり方を模索するべきだ」

 一方、県の担当者は「動物に県のお金を使うことに賛成の人ばかりではないところが難しい。他県の事例も参考にして考えたい」と話す。

不妊・去勢手術にふるさと納税活用も

 他県では地域住民の協力を得たり、ふるさと納税の寄付金を活用したりして、野良猫などの不妊・去勢手術を進めている。

 長野県では2002年度、野良猫を地域住民が共同で世話する「地域猫」事業が始まり、県も支援する。地域住民が持ち込んだ野良猫を県の施設で手術し、手術後は住民が頭数を把握して世話をする。手術費用は県が負担し、昨年度は121匹を手術した。担当者は「術後の管理も含め、地域の協力があって成り立つ」と話す。

 群馬県は昨年度から、ふるさと納税の寄付の使い道に「動物愛護」を加えた。約430万円が集まり、動物愛護団体などと協力して94匹を手術した。

 三重県はふるさと納税に加えクラウドファンディングにも着目。今年度、120万円を目標に寄付を募ったところ約218万円が集まり、130匹以上を手術した。担当者は「関心の高い人の協力を得てできる事業を、と考えた」と話す。

 こうした他県の事例を踏まえて山口代表は「他県で出来て富山でできないはずがない」と指摘。「動物とどう共生するか、もっと考えてもらいたい」

(竹田和博)

朝日新聞
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