ペットロス、木彫りで癒やす 表現し「再会」、死と向き合う
失った愛犬や愛猫を木の像に彫って、悲しみを癒やす。そんな取り組みを、さいたま市の工房が始めた。亡きペットへの思いを形にすることで気持ちに区切りをつけ、前を向いてもらおうと「ペットロス木彫りセラピー」と名付けた。
セラピーを開いている「木彫りすと工房」は、さいたま市浦和区の住宅街にある。昨年8月に始め、「卒業生」はまだ5人。宇都宮市の会社員、新井倫子(のりこ)さん(42)はその一人だ。2~6月に月1回、1時間半かけて通い、高さ約15センチの犬の木彫りを完成させた。
モデルは2011年8月に死んだパグ犬の「あずき」。13年間一緒に過ごした末の死はショックで、仕事中でも涙が止まらず、食事がのどを通らないペットロスに長年陥っていた。
そんななか、インターネットで偶然、木彫りセラピーを知る。彫刻刀を手にするのは小学生のとき以来で不安もあったが、手元の木材があずきの姿に変わっていくと元気だった姿を思い出し、うれしくなった。「抱え込んできた思いが形となり、一区切りついた」と新井さん。同じ悲しみを抱えてきたほかの参加者と出会えたことも心を楽にしてくれた。
指導するのは、さいたま市で動物キャラクターなどを作る木彫り作家佐藤努さん(48)。なくしたペットの注文が多いと気づいたことがきっかけだった。
日本ペットロス協会(川崎市)の吉田千史(ちふみ)代表理事によると、ペットロスが重くなるのは死を受け入れまいと心を抑え込むことが一因。生前の姿や思い出を呼び起こし、死と向き合うことが克服につながるという。絵画や像の制作、同じ経験を持つ人たち同士の対話など様々な方法をとり入れたセラピーがある。本格的な木彫りに着目したものは珍しいという。
細かい作業が連続し、緊張感や集中力が求められる木彫りだが、佐藤さんは「その分、ペットの特徴を忠実に表現することができ、楽しかった思い出とじっくり向き合うことができるんです」と言う。
完成までに4、5回、工房に通う。料金は4万8千円(材料費など含む、税込み)。問い合わせは佐藤さん(kiborist@gmail.com)へ。
(米田悠一郎)
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