弱った犬や猫を引き取り介護 「私の宝物」「気を張りすぎず」

みるみるに流動食を与える水越さん
みるみるに流動食を与える水越さん

 犬や猫もやがて年をとって老いるし、病気にもなる。その当たり前の現実に、飼い主はどう向き合えばいいのか? ペットの介護を続ける女性にその生活ぶりについてうかがった。苦労がありながらも、ペットたちとの親密な暮らしがそこにはあった。

(末尾に写真特集があります)

 東京・中野区に住む水越淑子さんは、これまで何匹か犬猫を看取ってきた。現在は犬2匹、猫2匹と一緒に暮らしている。「むぎ」「みるみる」という犬2匹は寝たきりで、水越さんが介護をしている。

「雑種犬のむぎは千葉の保護団体から2011年11月に譲渡され、引き取ることを決めたときは膀胱結石で入院中でした。退院して家に来てもなかなか私たち家族に馴れず、すぐにガブリッ。家族全員が噛まれるし、吠えるしで、大変でした」

 むぎの膀胱結石は治ったものの、人馴れせずにドッグトレーナーに半年間お世話になった。その後は一旦元気になったものの、この1年ぐらいは寝たきりだ。

「病院で小脳に障害があるのかもしれない?と言われました。立ち上がるとクルクルとその場で回ってしまいます。うまく歩くことが出来ないけど、トイレだけは外でしたい子だから、毎日玄関から抱きかかえて外に出して、家の前で排せつさせるんです」

みるみる(左)と背中合わせで眠るむぎ
みるみる(左)と背中合わせで眠るむぎ

繁殖犬だった豆柴

 もう1匹のみるみるは豆柴。むぎと同じ千葉の保護団体から引き取った。2013年9月のことだ。繁殖犬で5~6回出産を経験し、ひどい状態に置かれて重い皮膚病を患っていた。

「家に来たときは24時間ずっと身体をかきむしりっぱなしで、いつ寝るんだろう?とハラハラしました」

 しかも、皮膚病だけでなく、目も見えず、耳も聞こえない盲聾犬だ。引き取ってから卵巣にも病気が見つかり、一時は病院代がとんでもないことになった。引き取ってから5年、元気だったことはあまりない。輸液を点滴したり、シリンジで流動食を与えたりしている。

 今、2匹はそれぞれ別の部屋にベッドを作ってもらい、身体を横たえ、寝たきりの生活を送っている。水越さんの1日は、朝6時、みるみるの輸液(点滴)から始まる。犬2匹の顔を拭いたり歯磨きしたりしてから、9時から12時までは仕事。昼と夕には2匹に食事を与え、むぎの最後のトイレをさせ終わるのは、夜10時。その間に猫の世話もするし、犬たちをたびたび体位変換してもあげる。

「私は介護ヘルパーの仕事を20年以上しているんです。だからノウハウがあるって言うと変かもしれませんが、体位変換や飲みこみの確認、小さなペットボトルを使って身体を洗うとか、仕事でやっていることを犬や猫たちにも応用してやってあげられます」

「甘えられなかった子」

 みるみるには、1回100ccぐらいの流動食を、10~15分ぐらいかけて飲みこませる。膝の上にみるみるを乗せ、まるで赤ちゃんにミルクを与えるかのよう。水越さんとみるみるの穏やかな時間だ。

「みるみるはずっと我慢してきた子。甘えられない子だったから、今こうして甘やかしています。周囲には『犬猫貧乏』って笑われたりするし、去年亡くなったバセンジー犬のモンが小脳障害でいきなり倒れたときは最初、どうしたらいいか分からなかった。朝も夜も、その子に合せて生活し、私自身もダメージを受けてしまって。でも、理解あるお医者さんに巡り会い、いろいろと相談を重ねて楽になりました。気を張りすぎないことです。階段から落っこちたりしたときも『落ちてる~~、ごめん~~』と深刻にとらえ過ぎないとか」

かごで丸まって眠るとらきち
かごで丸まって眠るとらきち

面倒をみてもらえる場?

「この子たちは私の宝物だからねぇ」。そういう水越さんの所に行けば、面倒をみてもらえる……と、動物たちの間で会話が交わされているのだろうか? 4年前の4月には、自宅の庭に「猫が落ちていた」。ジッとして動かないので、家にあった捕獲器を仕かけると、すぐに入って来た。病院で診てもらうと、骨盤が折れているという。「とらきち」と名付けたこの子は、理解ある病院と二人三脚で自然治癒を選択した。

「骨が腸を圧迫する形で固まって、そこからは便秘との闘い。指で摘便してもらったり、食事を変えたり、今は朝の下剤でなんとかなっています」

 家にはもう1匹、「ヒメ」という猫がいる。唯一この子は元気に過ごして17歳になった。ヒメは動物病院の前に捨てられていた子だ。

「ヒメは手のかからない分、手をかけてあげられなくて、逆にかわいそうな気がしています。人が来ると『なでて』と近寄ってくるんですよ」

 ちなみに、最近カメも家族に加わった。その子も水越さんの家の前にノソノソ歩いてやって来たそうだ。

和田靜香
主に音楽と相撲を書くライター。音楽評論家・作詞家の湯川れい子さんのアシスタント時代、事務所に猫と犬がやって来て共に日々暮らして以来の猫・犬好き。主な著書に『スー女のみかた~相撲ってなんて面白い!』や『東京ロックバー物語』などがある。

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