もふもふ秋田犬の赤ちゃん 子育てに奮闘するママ犬、パパ犬
フランスに暮らす日本人女性宅で、今年1月、飼い犬の秋田犬に赤ちゃんが生まれた。子犬たちの誕生から2カ月間を記録した写真集が、この秋、発売された。ぬいぐるみのような子犬たちと、初めての子育てに奮闘するママ犬とパパ犬。ほっこり心温まる一冊だ。
2018年1月11日、フランスのノルマンディー地方。ここに住み、編集ライターやカメラマンをしている酒巻洋子さんが飼っている秋田犬から、初めての子犬が生まれた。
ママ犬「ユキ」とパパ犬「カイ」。その間に生まれた4匹の子犬。その誕生から、新たな家族のもとへ巣立つ生後8週過ぎまで、秋田犬の家族の様子を丹念に記録したのが、この写真集『秋田犬のおやこ』(翔泳社)だ。
ピンク色の小さな肉球、お乳を飲みながら揺れる尻尾、くっついて団子のように眠る姿。2週たつと目が開き、3週たつと歯が生え、4週たつと歩けるように……。
子犬の成長をとらえた1枚、1枚から、温もりが伝わり、写真に引き込まれる。それを見守る酒巻さんのコメントも温かい。
酒巻さんは2003年にフランスに渡り、ノルマンディーとパリを行き来する生活を送っている。ノルマンディーの自宅には牧草地があり、馬、牛、羊、ニワトリなどを飼育し、繁殖もしている。外猫もいる。自然の中で多くの動物と暮らしてきた酒巻さんだが、秋田犬の出産に立ち会うのは、初めてだったという。
「ユキは3年前にフランス北部のリール近郊の個人ブリーダー宅で、カイは同じ年にノルマンディー地方の個人ブリーダー宅で生まれ、ともに生後2カ月半頃に、わが家に来ました。わが家ではふだん、犬たちは家と柵で囲まれた中庭を自由に出入りしています。出産の前兆で、メス犬は地面を掘って巣作りをしようとするのですが、ユキが中庭のどこかや、屋外にある犬舎で出産を始めてしまうのではないかと心配しました」
出産が近づくと、家の中に出産用の木の巣箱を置き、予定日の前日には、酒巻さんもそばのソファで寝た。出産は順調で、「手伝うことはなかった」という。
奮闘するママ犬と戸惑うパパ犬
ユキは日に日に大きくなっていく子犬に合わせ、立ってお乳をあげる「カウンターバー」も始める。子犬を遊ばせるのもママ。そんなママの奮闘ぶりも本書の見どころだ。
「動物の世界でも、すべてのメスが自分の子の面倒をちゃんと見るとは限らないですが、
ユキは面倒見のいいママで助かりました。人間の育児も大変だと思いますが、犬の育児も大変。母乳をあげていたユキの毛がごっそり抜けて、すごい痩せました。それでもユキは役割を最後までしっかり果たしてくれました。一方のカイは、自分が“子犬たちのパパ”だとは分かっておらず(笑)、遊び仲間ができたくらいに思っていたのかもしれません」
パパのカイは、当初は巣箱にさえ入れてもらえず、生後4週目で巣箱の外に出た子犬と初めて対面。どうして良いかわからず困惑していた。それでも生後6週を過ぎると、育児疲れのママに代わって、屋外で遊んで社会性を学ばせる「頼もしい」イクメンになっていた。その姿も微笑ましい。
「子育ての大変さは犬も同じ」
本書を企画した担当編集者は、見どころをこう説明する。
「動物好きの方はもちろんですが、子育て中の方にもぜひご覧いただきたいです。小さなお子さんがいるご家庭なら、出てくる子犬を子どもに見立ててお話すると、キャッキャと喜びますよ。またお母さん・お父さん犬の姿には、『子育てがたいへんなのは犬も一緒だな』と共感を覚えます(笑)。写真絵本としても楽しんでいただけると思います」
生後8週で7.5キロまで成長した子犬たちは、その後、アルザス地方へ1匹、シャンパーニュ地方へ1匹、ノルマンディー地方へ2匹と、フランス各地の家庭にもらわれて行ったという。
酒巻さん宅では、毎春、牛や羊も出産する。すべての子が無事に生まれてくるわけではなく「生と死が時に寄り添い、ともに身近にある」生活だという。
秋田犬の家族を通して、生の尊さや喜びが伝わってくる一冊だ。
- 『秋田犬のおやこ』
- 出版社:翔泳社/著者:酒巻洋子/定価:1300円+税/A5変・112ページ/「むくむくもふもふ秋田犬カレンダー2019」も発売中。
- 酒巻洋子
- フランス在住。編集ライター&カメラマン。著書に『パリ犬』『パリにゃん』(産業編集センター刊)など。ブログ「いつものパリ」(https://paparis.exblog.jp/)、「ノルマン犬猫日記」(https://normanneko.exblog.jp/)
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