犬や猫と共に生きる ペットと暮らす単身高齢者の幸せと覚悟

4人目の飼い主、橋本都子さんのもとで穏やかに暮らす月子
4人目の飼い主、橋本都子さんのもとで穏やかに暮らす月子

 65歳以上の6人に1人が単身で暮らす時代、そのかたわらで共に老い、時に生きがいや励みにもなるペットたちは、大きな存在です。ペットと暮らす単身高齢者たちに、その幸せや覚悟について、聞きました。

「この子のために、1日でも長く元気でいないと」

 大阪市住之江区に住む橋本都子(くにこ)さん(74)の朝は、推定11歳の雌猫・月子の「ふみふみ」から始まる。おなかの上にそっと乗ってきて、せっせと前脚を動かす。「この子のために、1日でも長く元気でいないと」。甘えてくる月子の姿に、思いが募る。

 社会に出てからずっと一人暮らしだった。結婚はせず、子どももいない。父母と兄はずいぶん前に亡くなり、姉一家をはじめ親戚は全員関東地方にいる。

 そんな橋本さんのもとに2008年3月、月子はやってきた。橋本さんは、月子にとって4人目の飼い主。最初の飼い主には海外転勤のため捨てられ、2人目のところでは先住猫にいじめられてなじめず、3人目の飼い主は猫アレルギーになってしまったため、最終的に橋本さんのところにもらわれてきたのだ。転々としたためか、当初は物静かで鳴かない猫だったという。

猫中心に回る生活「毎日張りがある」

 それから10年余り。70歳で音楽教室の講師を引退し、いまは月子中心に生活が回っている。月子に起こされ、月子のエサを買うために外出し、おやつをあげたりトイレの猫砂(ねこすな)を片付けたりするために動き回る。ときどき名前を呼ぶ。月子は「ニャン」とこたえてくれる。「最近になって、月子がよくしゃべるようになったんです。世話をしないと困る相手がいるから、毎日張りがあります」と話す。

 気がかりは自分の健康。「ようやく心を開いてくれたのに、5人目の飼い主のもとに行くことになったらかわいそう。もう二度と悲しい目にあわせたくない」。だから毎朝の体操を欠かさず、高血圧対策も心がけている。

 それでも万が一に備え、高齢者によるペット飼育をテーマにしたセミナーなどにまめに足を運ぶ。月子のためにまとまった資金を残し、専門家に面倒を見てもらうための信託契約の検討も、最近始めたという。

最期まで飼う 覚悟の先に「老老介護」の可能性も

 最期まで飼う。年齢を問わず、その覚悟がなければペットは飼えない。高齢者の場合、覚悟の先に、人とペットの「老老介護」の可能性も出てくる。

 名古屋市千種区の細江明平(あきひら)さん(67)宅では、ダイニングテーブルのかたわらに推定18歳の雌犬・美美(みみ)がじっと横たわっていた。今年春ごろから歩けなくなり、寝たきりになった。

寝たきりになった美美。「元気なころは手のかからない子だった。しっかりみとってあげたい」と細江明平さんは話す
寝たきりになった美美。「元気なころは手のかからない子だった。しっかりみとってあげたい」と細江明平さんは話す

 2000年12月、名古屋市動物愛護センターから譲り受けてきた中型の雑種犬。シェパードに似た外見で、近所の川で泳ぐのが大好き。「力の強い、立派な犬だった」という。妻・和子さんと、子どものような存在として育ててきた。

 15年1月、和子さんにがんが見つかり、2週間余りで急逝した。心の準備ができず、大きな喪失感に襲われた。アルコールに逃げようとする細江さんを、美美が助けてくれた。

 深酒しても、朝起きて、散歩に行かなければいけない。手作りしていたエサを、今まで通りあげないといけない。日が暮れたらまた、散歩に行かないといけない。「美美がいなかったら、自分はひどいことになっていた」と振り返る。

犬が死んだら「独りになってしまう」

 美美が寝たきりになってからは、抱きかかえてオシッコに連れて行き、ウンチをもらせば拭いてやる。床ずれしないよう、頻繁に体勢を変える。点滴のため、週2回カートに乗せて通院する。「妻は急に逝ってしまった。美美は、介護を通じてしっかり『お別れの時間』を過ごさせてくれている」

 和子さんが亡くなった直後には、自分が美美を残して先に死ぬことを憂えた。いまは、見送る時が来るのにおびえている。19キロあった美美の体重はいま7キロまで減ってしまった。「美美が死んだら独りになってしまう。どれだけ寂しくなるのか、想像もできない」と言う。

 年齢を考えれば、新たに犬を飼い始めるのは難しい。日本人男性の平均寿命は81.09歳(17年、厚生労働省調べ)。犬のそれは14.19歳(同、ペットフード協会調べ)。細江さんはこうつぶやく。「次、飼うならaiboかな」。

高齢者が飼い続けられない犬や猫 全国で増加

 12年の動物愛護法改正で、動物の飼い主には「動物がその命を終えるまで適切に」飼う(終生飼養)努力義務が課された。毎年数万匹単位で行われる、行政による犬猫の殺処分を減らす狙いがあった。こうした中で、高齢者が亡くなったり入院したりといった理由で犬猫を飼い続けられなくなり、捨てられる事例が全国の自治体で増加し、問題になっている。

 朝日新聞が動物愛護行政を担う全国の都道府県や政令指定都市など115自治体を対象に行った調査(回収率100%)では16年度、犬で1185匹(件)、猫で1777匹(件)が「高齢者から、または高齢が原因と見られる理由」で捨てられていた(18自治体は理由など未集計。19自治体は件数で回答)。犬では、同年度に全国の自治体に飼い主が捨てにきた合計頭数の、少なくとも4匹に1匹にあたる。

 こうしたことから56の自治体が、保護犬・保護猫を譲渡する際、譲渡対象者について、65歳前後を上限とする「年齢制限」を設けるなどの対応をしていた。14年度の調査では41自治体で、高齢者への譲渡を制限する自治体が増えていることがわかる。

「老犬・老猫ホーム」や信託サービスも

 一方で、飼育しきれなくなった犬猫を救うための社会的な仕組みの整備も、始まっている。有料で最期まで飼育する「老犬・老猫ホーム」が増えているほか、信託銀行などを活用してペットに遺産を残し、その管理を専門家に任せるサービスなどが充実してきた。

 高齢者に信託サービスなどを提供するNPO法人「ペットライフネット」の吉本由美子理事長は「犬猫の寿命が延びてきて、高齢者が飼い続けることが難しくなっている現実がある。高齢者によるペットの飼育放棄を防ぐには、なんらかの形で誰かが飼いつなぐしかない。社会として、そのための仕組みを整えていく必要があると思う」と話している。(太田匡彦)

朝日新聞
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