動物の熱中症、どう防ぐ? 愛犬を失った記者が取材
災害級の猛暑が続く。時には人間以上に注意が必要となるのがペットの熱中症だ。記者自身が経験した悲しい出来事から、人が動物にできる対策を考えた。(大木理恵子)
大切な存在、どうしたら救えたのか 悲しみと後悔
7月17日夜、東京の実家から電話があった。「セレンが熱中症になっちゃって、病院に行っていた」。セレンは8歳のメスのシーズーで、私は今春に実家を離れるまで長く一緒に暮らしていた。
母は午前中、仕事に出かけていた。万一の発火を警戒し、エアコンを含む電気製品をつけ放しで出かける習慣がなかった。その代わり風通しのよい部屋を開放し、セレンが自由に移動できるようにしていた。仕事がたてこんでしまい、帰宅できたのは夕方。セレンはぐったりしていたという。
セレンの様子をテレビ電話で見せてもらった。「伏せ」の姿勢で、のどの奥に何かを詰まらせたような音を立てている。でも、未明に「立って歩き始めた」という連絡を聞き、一命はとりとめたと思った。だが翌日夜に悲報が届いた。母の背中に飛び乗った瞬間、ガクンと倒れ、そのまま動かなくなったと聞いた。
セレンは散歩が大好きで、出かける前はボールのようにはねて喜んだ。人の気持ちがわかる賢い犬で、私が落ちこんだりすると、そばに来てずっと一緒にいてくれた。何にも代えがたい、大切な存在だった。
私たち家族は、どうしたらセレンの死を防げたのか――。そんな深い悲しみと後悔から、取材を始めた。
犬も夏場は室内飼い、ためらわずエアコンを
セレンを担当してくれていた花園動物病院(東京都)院長の金子賢一・獣医師に電話した。「熱中症で心臓がダメージを受けたのだと思う」という。
金子さんによると、犬は暑さに弱く、汗腺がほとんどなく汗で体温調整ができないため、体内の熱を放出する手段は呼気だけという。金子さんは「夏場は室内飼いにしてほしい。部屋のエアコンもためらわずにつけて。人間のように汗をかけないので、扇風機は効果がない」と付け加えた。
散歩に出かける場合、時間帯にも要注意だ。「日の出前がベストだ。日没後も気温が高い場合は避けてほしい」という。
一方、猫は、犬とは皮膚の特徴が異なるなど、比較的効率よく熱を発散できる。また、鳥類も、原産国が南方の暖かい地域の種類は暑さに耐性があるという。だが、一定の注意が必要な点は同じだ。
種類によって最適な対策 王子動物園
神戸市立王子動物園では、多くの動物に対してネットで日陰を作るなどし、熱中症対策を講じる。
寒冷地域に由来する動物もおり、飼育展示係長の谷口祥介さんは「特に注意している」という。
ホッキョクグマは屋内にある寝室と屋外の間を自由に往来でき、寝室の温度は22度。また、屋外には細かい氷の粒で作った「雪山」があり、そこに飛び込んだり背中をすりつけたりして暑さをしのげるつくりだ。
ヒツジやラマ、モルモットなどの小動物とふれあえる「ふれあい広場」ではヒツジが首に布を巻いていた。布製のバンドの中には凍った保冷剤が入っている。暑さに備え、5月には毛刈りをしているという。
谷口さんは「動物は言葉を話せない。動き方や呼吸の様子など、飼育員が観察し、そのつど最適な暑さ対策を考えている」と話す。
人間の責任を痛感 記者の一言
室温を下げたり、氷で冷やしたり。動物への暑さ対策も、多くは人間と同じだ。動物とともに暮らす人間の責任として、普段からもっとできることがあったと痛感した。セレンの死を知った時の気持ちは言葉にできない。あんな思いを、誰にもしてほしくない。
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