未承認フィラリア予防薬の広告を掲載容疑 業者を書類送検
ペットの犬や猫などが感染する寄生虫病「フィラリア症」の国内未承認薬の広告を自社の通販サイトに掲載したとして、警視庁は9日、動物用医薬品の輸入代行会社「ブレインネットワーク」(大阪市城東区)と同社の男性社長(44)を医薬品医療機器法違反(承認前医薬品等の広告禁止)の疑いで書類送検した。
「日本では動物の医療費がとても高額」「特にフィラリア予防薬は海外と比べて倍以上」「薬を安価で飼い主様にお届けすることによって、日本のワンちゃん猫ちゃんの暮らしを少しでも改善していければと思っております」ーー。同社が運営していたサイトにはそんな言葉が並んでいた。「個人輸入代行」を掲げ、注文を受けるとタイの業者から顧客に直接、予防薬が国際郵便で送られる仕組みだった。
ネット上には、同様のサイトは多数存在する。扱う薬は国内で未承認のものもあるが、多くのサイトは「海外ではスーパーでも安価で買えるのに、日本では獣医師らの既得権を守るために処方がないと買えず、不当に高い」と強調する。
フィラリア症は、蚊が媒介する寄生虫が心臓に寄生し、心臓病などを引き起こす病気だ。予防薬はこの幼虫を駆除するもので、地域差はあるが、蚊が発生する5~月ごろにかけて毎年投与する必要がある。
動物用医薬品の許認可などを所管する農林水産省によると、国内ではフィラリア予防薬は獣医師による診察を受けないと処方ができない「要指示医薬品」に指定されている。体調によっては激しいアレルギー反応が起きて死に至る危険があるためだという。
日本獣医師会の大林清幸・小動物臨床職域理事は「抗生物質の一種で、副作用の可能性もある。獣医師のもとで使用し、責任の所在をしっかりしようという考えに基づいた制度だ」と説明する。自由診療のため、動物病院によって値段設定は異なるが、小型犬の場合、診察料や薬代を含めて1シーズン分で5千~1万数千円ほどかかるという。大林氏は「毎年必要な薬なので安く済ませたいと思う飼い主もいるかもしれないが、死に至るケースもあり、きちんと検査をしてから使用すべき薬であることを認識してほしい」と指摘する。
警視庁によると、今回の書類送検容疑は昨年6月と今年4月、ブレインネットワークのサイトに、国の承認を受けていないフィラリア症の予防薬「ハートガードプラス」の広告を掲載したというもの。小型犬用の場合、1箱(6カ月分)4300円で請け負い、手数料などを除いた1400円の利益を得ていた。2015年4月から3年間で延べ約2400人に販売し、少なくとも約800万円を売り上げていた。調べに対し「もうかりそうだと聞いて(輸入代行を)始めた」と述べているという。
(荒ちひろ)
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