トライアルから出戻り猫 2軒目でおばあちゃんと仲良しに
トライアルで一度は預けられた保護猫が、何らかの事情で保護団体に戻されるケースがある。もともといた先住猫との相性も、その理由の一つ。一度は出戻り、2カ所目の家で幸せをつかんだ猫がいる。猫は1歳。いま一番の仲良しは、なんと99歳のおばあちゃんだ。
(末尾に写真特集があります)
東京多摩地区にある一戸建て。坂本さん(44)は70代の両親、99歳の祖母と、猫2匹で暮らしている。
取材に伺うと、1階の居間の棚の上で、白黒模様のオス猫がくつろいでいた。5月で1歳になったハヤテだ。昨年9月、この家にやって来た。
きょうだいの縁で
ハヤテは野良猫が生んだ4きょうだいのうちの1匹。昨年夏、日本動物愛護協会が開いた保護猫譲渡会に参加して、いったんは別の家に引き取られた。だが、「先住猫2匹のうち1匹は仲良くなったが、もう一匹がどうしても受け入れない」と、ボランティアの家に戻されたという。最初に迎えた女性は、泣く泣くあきらめたそうだ。
一方、坂本さんの弟の家では、ハヤテのきょうだいの猫2匹を飼い始めていた。その弟から「戻ってきて、行き場がないらしい。飼ってあげられないか」と連絡があった。
行き場がないのはかわいそうだと、坂本家では家族会議を開いた。しかし、すぐには答えを出せなかった。それまで「蝶よ花よ」と育ててきたメス猫のヒメ(7歳)がいたからだ。
「ヒメはおにいちゃん(長男)とラブラブで」とおかあさんがいう。「ヒメは初めて飼った猫だし、自由気ままに暮らしてきたので、トライアルをするまで3週間も悩んだんですよ」
ハヤテは迎えた当初、2階の両親の部屋でケージに入れていた。ヒメは“あなた誰よ?”とばかり「シャーシャー」と声をあげ、ハヤテの方も目をパチクリ。だが、すぐに心配は消えた。1か月もすると、2匹はなじんできたという。
「ハヤテはヒメちゃんが好きで抱きしめたいけど、ヒメちゃんのほうは『今はヤメテ』って感じでふるのよ。だから2匹はほどほどの仲ね」とおかあさんは笑った。
98歳差の仲良し
取材に伺った日は不在だったが、坂本家には99歳のおばあちゃんがいる。外出するときは車椅子を使うが、しゃんとしていて、屋内では自分で歩くそうだ。このおばあちゃんが、ハヤテは大好きなのだという。
「居間の横がおばあちゃんの部屋なのですが、ハヤテはそこに入るのが好きなんです。おばあちゃんが布団で寝ていると、必ずそばにいくんです」
こんな感じで、と坂本さんが動画を見せてくれた。
ハヤテは布団で寝ているおばあちゃんに近づくと、おばあちゃんは微笑んでハヤテをなでたり、ポンポン背を軽く叩いたり、かと思うと、布団をぱっとかけたり……。99歳と1歳の年の差で遊びながら、絶妙なコミュニケーションをとっていた。
「もともとおばあちゃんは猫が苦手なほうで、ヒメもあまり近づくことはなかったので、ハヤテの行動にはびっくりでした」と坂本さんはいう。
先住猫へ気遣いも
夜、ハヤテは両親の部屋、ヒメは坂本さんの部屋で寝る。
「早朝になると、ヒメが私たちの部屋の入口に来るんです。すると、ハヤテが私の顔をなめまわして『ヒメちゃんが来たよ、ごはんをあげて』と私を起こす。お皿にフードを入れると、ハヤテは食べず、ヒメだけが食べて、またお兄ちゃんの部屋に戻ります。以前はヒメがこの部屋で寝ていたので、ハヤテの気遣いなんでしょうかね(笑)」
坂本さんは、ハヤテとヒメの健康記録を毎日つけている。特にいま気を付けているのは、脱走しないこと。網戸に開閉防止の留め具などを付けて工夫している。
「ヒメが若い頃に2度脱走したんです。一度は玄関から、もう一度は2階のベランダから。おやつで引き寄せすぐに戻りましたが、ハヤテはすばしっこいので気をつけないと。ねっ、ハヤテ」
ハヤテは、きょとんとしたような顔で聞いていた。2匹の猫は、4人の家族に見守られ幸せに暮らしている。

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