傷ついた子猫を保護、どうしたらいい? 【ペットの事件簿】

足が多少不自由な以外は、元気いっぱいの男の子。痛々しく見えても、実際苦痛はありません
足が多少不自由な以外は、元気いっぱいの男の子。痛々しく見えても、実際苦痛はありません

事件の経緯

 名古屋市にお住まいの吉田さん。愛猫は7歳の茶トラ猫の「こてつ」君(7歳5か月)です。実はこてつ君、左足の先端がありません。

「娘が小学生のころでした。雨の日に、学校帰りに段ボール箱を持ってきたんです。開けてみると、中には血まみれで、弱々しく泣いている生後2か月ほどの子猫! あわてて獣医さんに連れて行きました」

 子猫は左前足が足首部分で切断されていました。その日はとにかく処置してもらって帰宅。相談の上、家族に迎えることにしたそうです。

 子猫はようやく安心して暮らせる家に巡り合ったものの、落ち着くまでは大変な日々だったといいます。

「ミルクを与えようとしても、怖がって鳴き叫ぶばかり。ようやく自力で飲めるようになるのに2、3日かかりました。初めはトイレも決まった場所でできなくて、家中のあちこちでやらかす始末。今も、前足が不自由なためか猫砂では排泄できないので、犬用のペットシーツを利用しています」

 足の不自由さはあるものの、それ以外は健康そのもの。大けがした子猫を引き取ったご家族の判断もすばらしかった今回の事件ですが、このように、傷ついた動物を保護したときは、どうするのがよいのでしょう?

■ポイント

・拾った子猫が、大けがをしていた。
・自宅にはほかにペットがおらず、家で飼うことを決断
・トイレや食事など最初は大変だったが、今は元気に暮らしている。

→ 保護した動物が「大けがしている」「重篤な病気にかかっている」「伝染病が陽性」……など、そのままでは引き取れない状況の場合など、どうしたらいいのでしょう。

保護されて間もないころ。まだあどけなさの残る子猫でした
保護されて間もないころ。まだあどけなさの残る子猫でした

山本葉子さんのアドバイス 「誰かに相談して、力を合わせて」

 猫の保護活動をしていると、非常によく寄せられる相談です。

「傷ついた猫を保護したが、うちでは飼えない」

「保護した猫がエイズキャリアだった。うちの先住猫はエイズ陰性なので引き取れない」

 確かに大変です。ご相談にはお答えしていますが、私たちが最後に言えることは「あなたはどうしたいですか?」に尽きます。

 こう言うと「冷たい」「何とかしてくれると思ったのに!」と非難されることも多いのですが、ちょっと待ってください。もし「どんなケースでも大丈夫。私が何とかしましょう」なんていう機関や団体があったら、まず私が利用してます(笑)。

 ではどうするか? とても難しい問題です。私の考えを述べますので、皆さんなりにお考えいただけたら幸いです。

★覚悟があれば、飼うことはできる

 過去、相談を寄せた人で、「動物飼育不可」の賃貸に住んでいたのに、大家さんを説得して(もしかしたら余計に家賃を払って)、飼育を認めてもらった、という人がいました。「ペット可」の物件に引っ越した、という人もいました。

 親に大反対されたけれど、とことん話し合って飼育の許可を取り付けた、という人もいます。

 また、伝染性の病気のキャリアの場合は、それがどんな病気なのか、正しい知識を身に着けることが大切です。感染率はどのぐらいなのか。どうすれば感染するのか。感染と発症とは違うので、キャリアとノンキャリアと同じ家で飼育している人もいます。

 つまり、「どんな犠牲を払ってでも助けたい」のなら、飼うことは不可能ではない、ということです。 でも、そんなこと、なかなかはできませんよね。だから皆さん、困るんですよね。

ちょっとした物陰に隠れるのが得意。「外の世界には一切興味なし。家の中は安全だと思っているのか、外を見ようともしません」
ちょっとした物陰に隠れるのが得意。「外の世界には一切興味なし。家の中は安全だと思っているのか、外を見ようともしません」

★どの選択が正しいのか?

では、どう考えるか。

1.どうせ責任は取れないのだから、保護すべき動物を見かけてもスルーする
2.いったんは保護して、えさを与えたり、治療したりはするが、いずれは再び外に放す
3.保護団体や友人知人など、とにかく「つて」を頼って相談し、里親を探す
4.何とか自分で飼える環境を整えて引き取る

 私が出す答えは「その時の最善を尽くそう」ということ。そして「ご自分で決めましょう」ということです。

 1は、世の中にこういう人は多いのかもしれませんが、保護団体の立場としては論外です。

 2はどうか。一度は助けたのに、再び過酷な野良の世界に戻すなんて! 見て見ぬふりをする以上に、罪悪感が伴います。

 しかし、考えてみてください。病気・ケガの治療や短期間の給餌でも、体力は改善されるはずです。避妊・去勢までできればさらに文句なし。手を差し伸べなければ死んでいたかもしれない動物でも、状態が良くなってから外に放せば、まだ生きるチャンスは増えます。1よりは「まし」と言えるでしょう。

幸い感染症もなく、傷は完治。ちょっと怖がりで、ケージに閉じ込められるのが大キライなんだとか
幸い感染症もなく、傷は完治。ちょっと怖がりで、ケージに閉じ込められるのが大キライなんだとか

★一人で抱え込まない

 最も現実的なのが3でしょう。

 100%の正解はないのです。まして、それぞれに事情のある個人の力には限界があって当たり前。せっかく命を助けようとしたのなら、お住まいの地域の保護団体に相談するとか、SNSなどを利用して短期でも預かってくれる人を探すとか。とにかく時間を稼いで、その間に里親さんを見つけるとか。誰かの協力を仰げば、できることはいろいろ出てきます。

 自分一人で解決しようとするから、途方に暮れてしまうのです。できる限りのことでいいと思うんです。それが私の第一のアドバイスです。ただ、できる限りのことを「するか」「しないか」。その決断はご自身にしかできません。

 保護を必要とする動物に出会ったら、その場で「終生飼えるかどうか」なんて大変なことを考えなくてもいいんです。自分が終生飼えないからといって、保護をあきらめないで、と思います。誰かに相談する。力を合わせる。そこに策はあるはずです。

 このケースの方のように、すべてを引き受けられれば、ベストですね。そこまでできなくてもいい。大切なのは「救うか」「救わないか」。それを自分で決めることです。せっかくの善意なら、しっかりと意志を強く持って、少しでも「まし」なほうへ、一歩でも「良い方向」へ。

 大げさに考えず、誰かと協力しながら進めていけばいいんだ。そう思ってくださる方が増えることを、願っています。

【募集中】


みなさんの事件簿はありませんか?メールで、概要、名前、電話番号をお送りください。取材させて頂く場合があります。


<送り先>sippo-info@asahi.com

山本葉子

NPO法人「東京キャットガーディアン」(http://tokyocatguardian.org/index.html)代表。保護猫のシェルター運営、譲渡活動、グループ内に動物病院をもつほか、日本初の猫つきマンション、猫つきシェアハウスなどアイデアフルな企画を次々打ち出す。著書に『ねこを助ける仕事』(光文社新書・松村徹と共著)がある。

浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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