世界遺産めざす奄美大島 野生化した猫「ノネコ」捕獲へ

アマミノクロウサギをくわえるノネコ=環境省奄美野生生物保護センター提供
アマミノクロウサギをくわえるノネコ=環境省奄美野生生物保護センター提供

 世界自然遺産への登録をめざす鹿児島県・奄美大島で、環境省が近く猫の捕獲を始める。人間が島に持ち込み野生化したもので、環境省は、島固有のアマミノクロウサギなどの希少動物を襲い、生態系に影響がある、と説明する。捕まった猫の多くは殺処分される可能性が高く、疑問の声もある。

「生態系を壊す」

  独自の生態系と絶滅危惧種が数多く生息する生物多様性から、自然遺産への登録をめざす「奄美・沖縄」(鹿児島県・沖縄県)。だが、諮問機関は持続可能性に疑問を呈し、登録延期を勧告した。

 奄美大島の山林では、猫がアマミノクロウサギなどの希少種をくわえる姿が撮影されている。山林内の猫は2014年度時点の推計で600~1200匹。マングースとともに生態系を壊すとして、自然遺産登録に向けた課題の一つとされてきた。

「有害」殺処分に

 環境省と地元自治体は今年3月、猫の「管理計画」を公表。生け捕り用のわなを50~100個設置する予定だ。捕まえた猫は島内5市町村で作る対策協議会が管理する施設で1週間ほど飼育。飼い主を募るが、引き取り手がなければ殺処分する。環境省の番匠克二・希少種保全推進室長は「年300匹以上捕獲する必要があるが、人慣れしていないので多数のもらい手が現れるという希望は持ちにくい」という。

 動物愛護法では野良猫でも「愛護動物」とみなし、みだりに殺したり傷つけたりすれば2年以下の懲役か200万円以下の罰金が科される。野良猫の殺処分をしている自治体もあるが、駆除を目的とする野良猫の捕獲に法的な根拠があるわけではない。一方、「ノネコ」は鳥獣保護法で有害鳥獣として駆除できる野生動物とされているが、野良猫とノネコの間に法令による明確な線引きはない。

 環境省は、人間からえさをもらったり、捨てられたものを食べたりするのが「野良猫」で、野生動物だけを捕まえて食べている猫を「ノネコ」と区別している、といい、今回捕まえるのは「山中に生息し野生動物を捕って生きているノネコだ」(番匠室長)と説明する。首輪をしているなど飼い猫の可能性がある場合、役場の掲示板に特徴などを公示。地元自治体は飼い猫へのマイクロチップ装着の義務化などを進める。

反対署名5万人

 ただ、野良猫も山林に入ることは珍しくなく、捕獲場所だけを根拠にノネコと断定することには疑問も残る。林野庁の国会答弁には「医学的に胃袋などを検査し食生活上の習性で判別しなければならない」という趣旨のものもある。

 00~17年に確認できたアマミノクロウサギの死体743体の死亡原因を環境省が調べたところ大半は原因不明で、交通事故が25・7%。猫など肉食動物に殺されたと断定できたのは11・2%だった。

 動物愛護のNPO法人「ゴールゼロ」の齊藤朋子代表は「今回の計画は拙速だ。殺処分以外の道を探ってほしい」。捕獲計画への反対署名は5万人分以上が集まった。自然遺産の小笠原諸島(東京都)では野生化した猫を本土に移送し飼い主を探すプロジェクトがある。川口短大の小島望教授(保全生態学)は「科学的根拠が明確でないまま、人間の都合で猫だけに責任を押しつけている。計画を進めても解決に結びつかない可能性がある」と指摘する。

(太田匡彦)

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