「ふるさと納税」で保護猫を救おう 獣医師会が活動を始める
ふるさと納税の仕組みを使って飼い主のいない猫を減らしていく活動が4月、札幌市で始まった。全国から寄せられる寄付を活用し不妊去勢手術などをしたうえで、新たな飼い主探しにつなげる取り組みだ。「さっぽろほごねこプロジェクト」と銘打った。
保護猫の譲渡 重い費用負担が保護団体の課題
札幌市小動物獣医師会が始めた。飼い主がいない猫を保護団体が一時的に引き取って新たな飼い主に引き継ぐ活動が広がる一方、譲渡までの飼育費や不妊去勢手術などの費用はこうした団体がまかなっており、負担の重さが課題となっている。
そんな中、同会は市が2008年度に設けた「さぽーとほっと基金」に目をつけた。自治会やNPOなどの営利を目的としない公益的な活動で、適正と認められれば助成が受けられる。元になるのは支援してくれる人から市への寄付だ。
寄付する側にとっては、お金を使ってほしい団体を指定できるうえ、「ふるさと納税」として上限までは寄付額から2千円を引いた額が所得税や住民税から控除されるのが利点。団体にとっても、市の審査を経ることで信頼性をアピールできるメリットがある。
獣医師会の計画では、野良猫の場合、雌の成猫なら健康診断と不妊手術、ワクチン接種、個体識別用マイクロチップの埋め込みなどに計約4万5千円かかるが、3分の1の約1万5千円は助成金でまかない、残りは保護団体と動物病院に3分の1ずつ負担してもらう。雄も計約3万6千円の費用を3分割して3分の1に助成金を充て、保護団体の負担を和らげる。
昨年10月に基金の登録団体となった獣医師会は審査の結果、今年3月末までに集まったお金約310万円を使って4月から事業を始められることになった。5月8日現在、15件の申し込みがあり、うち14件は既に手術を終えたという。
費用の分担は動物病院にとっては原価ぎりぎりくらいの設定という。常務理事の玉井聡さん(55)は「赤字が出てしまっては続かないが、寄付をいただくのにもうけるというのもちょっと違う。事業を通じて、捨てられたり放置されたりする猫をもっと少なくしたい。飼う前に、じっくり考えてほしい」と話す。
殺処分は減っても、捨て猫問題は続く
捨て猫が野良猫になって増えたり、飼い主が亡くなったり。保護団体のもとには連日、さまざまな事情で飼い主を失った猫の相談が寄せられている。
札幌市のNPO法人「猫と人を繫(つな)ぐ ツキネコ北海道」は、代表理事の吉井美穂子さん(58)が2012年に立ち上げた。野良猫や捨て猫対策の相談を受けるほか、新たな飼い主探しを手伝う。保護猫のいる猫カフェでの売り上げや寄付が主な活動資金だ。
猫の引き取りはしていないが、飼育放棄などで一時的に保護する猫は年間約300匹。毎日1匹近く保護している計算だ。多頭飼育が見つかると一気に増える。2年前、砂川市で120匹を1軒の家で飼っていたケースがあった。相談電話も毎日入る。飼い主の高齢者が施設に入るなどで猫が残され、ケアマネジャーから「どうしたらいい?」と聞かれたことも。
高齢などのため飼い主が新たな家族を探すのが難しい場合は、本人に代わってSNSなどで募る。今年は4月末までに82匹を新たな飼い主へとつないだ。
札幌市動物管理センターに収容される猫は12年度に1817匹だったのが徐々に減り、16年度は1151匹になった。13年度に法律が改正され、終生面倒をみる原則に反する引き取りを拒めるようになった影響が大きいという。翌年度からは保護団体への譲渡を制度化して殺処分も大幅に減り、16年度は1匹となった。
ただ、収容数の減少について吉井さんは「行政に受け入れられないものが、うちのような団体に回ってくる。問題が解決されたわけではない」と話す。捨て猫はかえって増えている、と感じている。
「ほごねこプロジェクト」について吉井さんは「費用が安くなるのは大変助かる」としつつ、「飼い主のいない猫への理解がさらに広がり、臨機応変に対応してくれる動物病院が増えてほしい」としている。
(片山健志)
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