顔や鳴き声が赤ちゃんと共通? 猫はなぜかわいいのか、愛される理由を科学的に分析

 猫は犬と並んで、長い間人間の伴侶動物として共に暮らしてきたパートナーです。人が猫を飼いたいと思う理由はさまざまありますが、猫の魅力のひとつはその「かわいらしさ」です。なんといっても猫は見た目が可愛い、見ていて癒されるというのは、多くの愛猫家が感じていることでしょう。

 なぜ人間は、猫を「かわいい」と感じるのでしょうか。

 その理由のひとつに、猫の目が大きいことが挙げられます。ほかの動物に比べると、顔の面積に占める目の割合が大きく、位置も比較的顔の下の方にあります。そして逆に口元は小さいのです。同じネコ科のライオンと比べても、猫の目は大きくて下の位置にあり、口元はキュッと小さくなっているのがわかります。

顔の作りにかわいらしさの秘密が
顔の作りにかわいらしさの秘密が

顔の特徴は赤ちゃんと共通する

 実はこれらの特徴は、人間の赤ちゃんや幼児が持つ特徴とも共通します。目は大きくて比較的顔の下の方に位置しており、口元が小さく、体と比べて頭が大きく、おでこが少し出ています。これらの外見的な特徴は「幼児図式」ともいい、こうした特徴が強いほど、人はその対象をかわいい、守ってあげたいと感じます。特に女性は、こうした幼児図式が強調される顔を見ると養育したいという欲求が強まる傾向にあります。

 また、猫の「ニャー」という鳴き声がかわいいと感じる人もいるでしょう。実際に、猫の「ニャー」という鳴き声は、猫の祖先種であるリビアヤマネコの鳴き声と比べると、人が聞いて心地よいと感じる程度が強いことがわかっています。要するに、猫は長い間、人と共存する中で、人がかわいいと感じる鳴き声に進化させてきたと考えることができます。

 実はこの「ニャー」という声は、子猫が母猫に対して使う鳴き声で、大人の猫同士でのコミュニケーションで使われることはほとんどありません。猫は人との関わりを深めた結果、本来は子猫のうちに卒業するはずの行動を成猫になっても続けていると考えられるのです。

猫の魅力について講演する齋藤慈子さん
猫の魅力について講演する齋藤慈子さん

「ゴロゴロ」と、赤ちゃんの泣き声の共通点

 猫がゴロゴロと喉を鳴らすのも、かわいいですね。この「ゴロゴロ」は猫同士では互いに好意を示し合う親和的な信号となりますが、人に対してはそれだけでなく、お腹が空いた時などにも使われます。人に対する要求を表現する「要求ゴロゴロ」は、猫同士のゴロゴロとは、音響学的にも異なっています。

 興味深いのは、この「要求ゴロゴロ」の周波数には、人間の赤ちゃんの鳴き声と共通点があることです。赤ちゃんもお腹が空いたときやオムツを変えて欲しいなど不快を感じた時に泣き、親はそれを聞いて「なんとかしてあげないと」という気持ちになりますね。猫が発する「要求ゴロゴロ」に対しても、無意識に人は世話をしてやりたいという気持ちになるものなのです。

齋藤慈子
上智大学総合人間科学部心理学科准教授
専門は比較認知科学、発達心理学。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。東京大学総合文化研究科助教、講師などを経て現職。

*本記事は、リビングデザインセンターOZONE主催のイベント「犬猫と暮らす快適な住まい」で開催されたセミナー「ネコとヒトとのコミュニケーション ツンデレなネコを振り向かせる秘訣」から抜粋し、構成し直したものです。

森田悦子
フリーランス記者、ファイナンシャルプランナー。金沢大学法学部卒。地方新聞社会部記者、編集プロダクションを経て独立。得意テーマは経済、金融、投資、社会保障、ペットなど。「AERA」「週刊朝日」などで執筆中。どちらかというとネコ派。

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