「猫寺」といわれる御誕生寺の犬・アンディー
「猫寺」といわれる御誕生寺の犬・アンディー

有名な「猫寺」に大型犬、猫の中でのんびり 「仏の教えのよう」

 福井県越前市に、「猫寺」として全国に知られるお寺「御誕生寺(ごたんじょうじ)」がある。曹洞宗の禅寺で、御年91歳の板橋興宗住職が、2002年に段ボールに入っていた捨て猫4匹を保護したところ、数十匹の猫が集まるようになった。現在も30匹近くの猫が自由気ままに過ごしている。この冬、この「猫寺」に、なんと犬が仲間入りした。

  北陸自動車道を、武生インターチェンジで下り、およそ10分。坂道を上ったところに御誕生寺がある。猫の姿が見えると、スピードを緩め、けがをさせないよう慎重に運転した。仏像と仏像の間に猫が座っており、猫を描いた看板も掲げられている。駐車場には全国各地のナンバーの観光バスや、乗用車。愛知県から来た若い女性ツアー客に聞くと、「御誕生寺は福井観光の目玉」だとのこと。猫好きにとっては、外せない観光スポットだ。

 境内では十数匹の猫が思い思いの場所で過ごしていた。どこからか観光客の声が上がった。「あれ! 犬もいるよ」

観光客を喜んで出迎えるアンディー
観光客を喜んで出迎えるアンディー

 声の先には、ゴールデンレトリバーのアンディー(オス、2)が、行儀よくお座りして、出迎えていた。猪苗代昭順副住職によると、関西盲導犬協会から託されたそうだ。アンディーは盲導犬に適していないと判断され、キャリアチェンジした。昨年11月末から、ここ御誕生寺で「第二の人(犬)生」を送っている。

 アンディーは盲導犬として訓練を受けていたため、人懐っこいが、おとなしく、むやみに鳴かない。近づくと、そーっと足元に寄ってきて、鼻を擦り付ける。なでると、うれしそうに尻尾を振る。跳び上がって喜んだり、急に駆け出したりしないので、子どもが近づいても安心だ。子ども時代に犬を飼っていた猪苗代副住職はアンディーをかわいがっており、アンディーも副住職が好きなのか、まとわりついている。猫たちともうまくやっているようだ。

「アンディーと猫の距離感はさまざまです。擦り寄っていく猫もいれば、遠くで見ているものもいます。彼らは適度な距離を保ち、うまく付き合って、仲良くやってくれています」

 猫を目当てに御誕生寺へ来た参拝客は、犬もいることに驚くが、すぐにアンディーを気に入り、一緒に写真を撮ったり、遊んだりしている。すっかり人気者だ。

えさを食べる御誕生寺の猫たち
えさを食べる御誕生寺の猫たち

 アンディーが寺に仲間入りした頃、福井県内は豪雪に見舞われ、御誕生寺周辺は多い時には150センチ近い積雪があった。猫は寒そうに丸まっていたが、アンディーは元気に雪の中を走り回っていたという。

 御誕生寺では、SNSなどを活用して保護猫の飼い主を募っている。年に2度、地元の動物愛護センターと連携して猫の飼い主探しの催しを開くと、「お寺でもらった猫は縁起がよさそう」だと、30匹の子猫に対して譲渡希望が40人名乗りを上げて抽選となることもある。

「えさや猫砂は、全国からのご寄付でまかなっています。寄付をいただいた方で希望される方から、お名前と、亡くなった愛猫の名前を聞いて供養して差し上げます」

猪苗代副住職とアンディー
猪苗代副住職とアンディー

 猪苗代副住職は猫が寺にもたらす効果について語ってくれた。

「境内で、のんびりと過ごされる方が少なくないでしょう。私たちは皆さんに、お経を読んだり、仏教の教えを説いたりするわけではないのです。でも、癒しや救いを求めてこられた方が、リラックスして帰って行かれるのを見ると、猫は仏教の教えそのもののような気がします。また、いつでも来てください」

 ゆったりした空間で、アンディーと猫たちはゆったりと過ごしている。「猫寺の犬」としてすっかり環境になじみ、幸せそうだ。猫の楽園は、犬の「安住の地」でもあった。

・御誕生寺フェイスブック
https://www.facebook.com/gotanjouji/

若林朋子
1971年富山市生まれ、同市在住。93年北陸に拠点を置く新聞社へ入社、90年代はスポーツ、2000年代以降は教育・医療を担当、12年退社。現在はフリーランスの記者として雑誌・書籍・広報誌、ネット媒体の「telling,」「AERA dot.」「Yahoo!個人」などに執筆。「猫の不妊手術推進の会」(富山市)から受託した保護猫3匹(とら、さくら、くま)と暮らす。

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