カフェやショップで保護犬・猫の里親探し 一匹でも救いたい

坂さんとほごっこ♡CAFEの犬たち=岡山市南区洲崎1丁目
坂さんとほごっこ♡CAFEの犬たち=岡山市南区洲崎1丁目

 迷子や捨てられるなどして保護された犬や猫と触れあえるカフェ、子犬ではなく保護犬がいるペットショップ。一匹でも多くの命を救いたいとの思いで、「里親探し」に取り組む人たちを取材した。

■オープン10カ月、33匹を譲渡 自宅をカフェに改装、坂さん

 岡山市南区の住宅街。民家が立ち並ぶ静かな道をゆっくり走ると、2階建ての家の前に看板が見えた。カフェ形式で保護犬や猫の譲渡活動をしている「ほごっこ♡CAFE(カフェ)」。インターホンを鳴らすと、カフェを経営する坂真由美さん(49)が笑顔で迎えてくれた。

 自宅を改装し、昨年5月にカフェをオープンした。以前は保健所から預かった保護犬や猫の譲渡をするボランティアをしていたが、仕事をしながらの活動は大変で、家族との時間も少なかった。犬や猫と遊べない譲渡会への疑問もあり、「何かを犠牲にしなくても続けられる形で、犬や猫との相性をじっくり見られる譲渡をしよう」とカフェ形式での「里親探し」を始めた。

 寄付金は募らず、入室料やインターネットでの雑貨販売で運営する。坂さんは「保護活動を仕事として成り立たせたい。生活を犠牲にせずにできたら、保護活動はもっと広がると思う」と話す。オープンから約10カ月で犬4匹、猫29匹を譲渡してきた。カフェには犬、猫のいる部屋がそれぞれある。現在、飼い主を探している犬は3匹、猫は5匹。1回1時間までの利用で延長もできる。「カフェに通ううちに『この子を飼いたい』となってくれればうれしいです」と坂さん。

 譲渡の条件や相性が合えば、1週間の試し飼いなどを経て正式に譲渡される。「かわいい子がいるからおいで、という感じなので、気軽に楽しんでください」

■殺処分知り、子犬の販売中止 ペットショップ責任者、澤木さん

澤木崇さんとシュシュにいる保護犬=岡山市北区今2丁目
澤木崇さんとシュシュにいる保護犬=岡山市北区今2丁目

 岡山市北区のペットショップ「chouchou(シュシュ)」は2015年1月に子犬の販売をやめた。ガラスケースの中にいるのはすべて保護犬だ。

 06年にオープンし、当初は子犬の販売もしていた。責任者の澤木崇さん(43)は店の運営をするうちに、保護犬の譲渡活動をしている人と知り合い、もらい手のいない犬や猫が殺処分されている現実を知った。「犬や猫があふれかえっているのに、流通させるのはおかしいんじゃないか」。子犬の販売をやめ、店で保護犬の譲渡活動を始めた。

 収益は一時的に減ったが利用者は増えた。ネット通販の売り上げの5%を保護犬の事業に充て、前年度は過去最高の収益に。澤木さんは「珍しいペットショップかもしれないけど、正しいことをやっているという自負はあった」と話す。

 保健所から引き取った犬を店のスタッフらが散歩に連れて行ったり、えさをあげたりしながら、人に慣れさせる。希望者との相性などを見て、平均約1カ月で譲渡が成立するという。活動を始めてから3年間で約30匹の犬を譲渡してきた。

 澤木さんは「殺処分がなくならないのに、ペット業界が犬や猫を供給し続けている。救わないといけない犬や猫はどこから来たのかを考えないといけない。シュシュのようなペットショップがやっていけることを示していきたい」と話す。

■県内の殺処分数→減 譲渡数→増

 県内では岡山市と倉敷市の保健所と県動物愛護センターの3カ所で、飼えなくなった犬や猫、飼い主のわからない犬や猫などを引き取っている。3カ所とも飼い主からの引き取り数や殺処分数は減少傾向にあるという。

 県動物愛護センターの担当者は減少の理由の一つに2013年施行の改正動物愛護管理法を挙げる。同法によって業者からの持ち込みや、高齢や病気を理由に飼えなくなったペットの引き取りを拒めるようになった。センターによると、12年度と14年度を比較すると、飼い主から引き取った犬は267匹から30匹、猫は1006匹から29匹と、ともに大幅に減少したという。

 譲渡活動も殺処分数の減少につながっている。環境省のまとめでは、昨年度、引き取られた犬や猫のうち譲渡された割合は、センターが約7割、岡山市が約9割、倉敷市が約6割。譲渡には岡山市と倉敷市の保健所やセンターで譲渡会を開いて行うものやボランティアなどの民間団体を介したものがある。

 譲渡数の増加についてセンターの担当者は「ボランティアの力によるところが大きい。行政よりもネットワークがあり、多くの人に声をかけてくれる」。譲渡した犬や猫の7割ほどが民間団体を介して飼い主を見つけるという。

 担当者は「『殺処分0』を目標に掲げる自治体もあるが、0ありきではない。モラルを守って犬や猫を飼ってもらい、センターに来る犬や猫を減らす。その結果、殺処分数が0になればいい」と話している。

(本間ほのみ)

朝日新聞
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