ボビ(左)とサビ
ボビ(左)とサビ

引っ越し直前に愛猫が庭に逃げて戻らない! 【ペットの事件簿】

事件の経緯

 11歳のオス猫を筆頭に、6匹の猫と暮らす東京都の渡部さん。先日引っ越しをしたそうなのですが、その際、2匹が脱走してしまいました!

(末尾に写真特集があります)

「うちの猫たちはすべて元野良。外に出たがる子もいるので、注意はしていたんですが…」

 業者が来る前日、バタバタと片づけ作業をしていて、つい玄関が半開きに。

「あれっ?と思ったときには手遅れ。ドライフードを見せたらほとんど飛んで帰ってきたんですが、どうしても姉妹猫が2匹、帰ってこなくて」

 戻ってこなかった2匹は、家の庭で生まれたサビ三毛のサビと、白三毛のボビ。その庭の中にはいるのですが、のびのびと遊んでしまって、帰ってくる様子がありません。

「呼べば顔も見せてくれる。でも、餌で釣ってもダメ。追えば駐車してある車の下に入ってしまってお手上げでした」

 とうとう朝になって、業者も来てしまい、その日はそのまま引越しを決行。その夜から、渡部夫妻と三毛姉妹の持久戦が始まりました。

「大家さんにも報告して、毎日元の家に通いました。相変わらず庭にはいるけれど、呼んでも出て来なくなった。顔つきもだんだん野良時代の険しい顔に戻っていく……。こうなったら捕獲器を使うしかないと思って市役所にも相談しました」

 しかし市から捕獲器は貸し出してもらえず。「あきらめるしかないのかと思っていたところ、知人が捕獲器を持っている人を紹介してくれたんです」

 借りた捕獲器を2台、庭にセット。見知らぬ野良猫がかかっていたり、餌だけが盗られていたりしながらも、4日目にサビが、その翌日にはボビを無事捕獲したのでした。

ボビが捕獲器にかかっていた! 昼間、仕事の合間にチェックしに立ち寄ったご主人がすかさず撮影してメールしてくれた一枚。「へなへなと座り込みたくなるぐらいほっとしました」
ボビが捕獲器にかかっていた! 昼間、仕事の合間にチェックしに立ち寄ったご主人がすかさず撮影してメールしてくれた一枚。「へなへなと座り込みたくなるぐらいほっとしました」

■ポイント

・逃げたのは引っ越し前夜。7歳の姉妹猫2匹。
・その家の庭で保護した猫なので、土地に慣れていた。
・近くにいるのに、車の下や木の上に隠れてしまって捕まらない。

 こんなとき、どうしたら? 今後、逃がさないようにするにはどうしたらいいでしょう?

山本葉子さんのアドバイス  「まず冷静に。周囲の協力も求めましょう」

★そもそも逃がさないためには

 引っ越しは飼い猫の脱走が起こりやすいもの。最悪のパターンは「引っ越し先で脱走」のケースです。なにしろ猫にとっても飼い主にとっても、新しい土地は「アウェイ」ですから。

 今回のケースは元の家の庭で生まれ育った子で、水のある場所、餌のある場所などを知っていたでしょう。余計に「帰らなきゃ」という気には、なれなかったかもしれません。

 ではどうすればよかったか。

 引っ越しの準備よりも前に、何より先に猫たちを安心で安全な場所に移しておくべきだった、ということですね。

★逃げてしまったら…

 これが正解、という対策はありません。ただ、少しでも早く保護するために大切なことはいくつかあります。

・短期的&長期的な対策を同時に講じる

 まず、家周辺の隠れそうな場所の裏や下をのぞくこと。さらに、警察や保健所に届ける、近所に知らせて協力を仰ぐ。

 もし近所に「餌やりさん」(地域猫や野良猫に日常的に給餌している人)がいるなら「最近、新顔を見かけませんか?」ときいてみましょう。

 土地勘のある猫の場合、脱走から日が経つと行動範囲を広げる可能性もあるので、近所の餌やりさんから少し遠くの餌やりさんへと、情報を伝えてもらって捜索の輪を広げておくのもポイントです。近隣と少し遠方の両方に情報が届くように、万全を期しておくと安心です。

ボビの名前はしっぽがほとんどない「ボブテイル」から
ボビの名前はしっぽがほとんどない「ボブテイル」から

・チラシを作って情報を拡散する

 ここで何より有効なのが写真です。 顔や体の特徴がはっきりわかる、それも「なるべく可愛いく写っているもの」を用意しておきます。「かわいそう、早くみつかるといいのに」という人間の感情に訴えるには「可愛い写真」は有効です。(逃げた時点と姿かたちが違いすぎると逆効果ですが)

・ご近所さんとの協力関係が大事!

 世の中、動物好きな人ばかりではありません。中には「猫は嫌いだ」という人もいるでしょう。ならばむしろ「ご迷惑をおかけしてすみません。お嫌いでしたら、なおのこと、一日も早く捕獲しようと思いますので、ご協力お願いします」というぐらいにして、目撃情報などをお願いしましょう。一人でも多くの、人の目と情報が頼りになります。

・「ヘンゼルとグレーテル作戦」で器に入ってもらう

 捕まえるには、何かしら器に入ってもらうのが一番です。

 一口では満足しない、ほんのちょっとの餌を、点々と置いて、引き寄せたい方向に導くやりかたです。猫がどこにいるかさっぱりわからないなら、家に向かって放射状に。ケージなどに誘導したいなら、ケージ内にも餌を置き、猫が入ったら入り口を閉められるように工夫します。もちろん、無関係な野良猫などを引き寄せてしまう恐れもありますが、何もしないよりはマシです。

・一番やってはいけないことは…

 飼い主がパニックになったり、ヒステリックな態度をとることです。

 猫が逃げたら、誰しも慌てます。しかし、猫はちょっとした声のトーンも敏感に聞き分けます。名前を呼ぶなら、怒った声、焦った声は禁物。今回のように複数を捕まえたいときは、1匹確保したからといって「よかった!」「心配したのよ!」などと騒がないこと。未確保の1匹が寄り付かなくなってしまいます。まずは飼い主さんが冷静になることが、第一です。

やまもと・ようこ

NPO法人 東京キャットガーディアン (http://tokyocatguardian.org/index.html)代表。保護猫のシェルター運営、譲渡活動、グループ内に動物病院をもつほか、日本初の猫つきマンション、猫つきシェアハウスなどアイデアフルな企画を次々打ち出す。著書に『ねこを助ける仕事』(光文社新書・松村徹と共著)がある。

浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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