初対面の犬との適切な距離は? 犬にもパーソナルエリアがある
あなたが飲食店のカウンター席でランチを楽しんでいたとします。ほかのカウンター席は誰も座っていません。そんなときに、次に来たお客さんがあなたのすぐ隣に座ったら、どう思いますか?ほかの席もいっぱいなら仕方ありませんが、ガラガラなのにわざわざ隣に座られたとしたら、なんとなく嫌な気持ちになる方が多いと思います。
このような不快感は、「親しくない人に理由もなくパーソナルエリアに入られた」ことによるものといわれています。パーソナルエリアの広さは人によって異なりますが、「ここより先に入り込まれたくない」というエリアは誰にでもあるものでしょう。
それは、犬も同じです。ぴったりくっついて眠ったり、じゃれあって遊んだりしている犬たちにも、「相手によっては入られたくない距離」があるのです。
ここでは、そんなパーソナルエリアについて詳しくご紹介します。
犬にもパーソナルエリア
人間と同じように、犬にも「踏み込まれたくないパーソナルエリア」が存在しています。そのエリアは「逃走距離」といって、「踏み込まれたら逃げる」という範囲を示すものです。
また、逃走距離の内側には、さらに「闘争距離」があります。これは、踏み込まれた場合に逃げられない距離で、「踏み込まれたら闘う」というエリアです。
散歩中やドッグランなどで、一定距離を保っているときはなんでもない様子であった犬が、すれ違いざまに激しく相手に吠えかかることがあります。これは、すれ違う際に相手が自分のパーソナルエリア、それも闘争距離に踏み込んでしまったために起こることなのです。
パーソナルエリアに入られそうになったときの犬の行動
自分のパーソナルエリアにほかの犬が入ってこようとしたとき、相手を拒絶したければ、その場から遠ざかることになります。逃走距離に踏み込まれそうになった時点で相手から離れれば、闘争距離まで踏み込まれることはないからです。
ところが、相手が勢いよく走って来たりすると、対応が間に合わずに適切な距離をとれないことがあります。こうなると、犬は闘争距離に踏み込まれる覚悟をして、硬直を見せたり、臨戦態勢をとったりすることになります。
このような様子が見られたら、喧嘩が起こる可能性が高いと考えられます。飼い主が十分注意して、愛犬を制御するようにしてください。
パーソナルエリアを理解している犬の行動
社会化が十分できていて、パーソナルエリアについても理解している犬であれば、たとえ初対面でも、相手の「踏み込まれたくない」という思いをきちんとくみ取ることができます。近づこうとしたときに相手が硬直していたり、警戒する様子を見せたりする場合、パーソナルエリアを理解している犬は、中に立ち入るまえに立ち止まり、「闘いたいわけではない」ということをアピールします。
こういう対応ができる犬であれば、喧嘩に発展することなく、うまく距離をとることができます。しかし、すべての犬がパーソナルエリアを理解しているわけではありません。飼い主はドッグランなど、犬がフリーになっている場所では、自分の犬や周囲の犬の様子をよく見て、気を配ることが大切です。
犬同士の距離の詰め方は?
「パーソナルエリアの中に入って仲良くなりたい」「挨拶をしたい」と思っている犬は、相手のパーソナルエリアの外で地面のにおいを嗅ぐことがあります。人間も、さりげなさを装って、自然に好きな相手に近づこうとすることがありますが、犬も、ほかのことに集中している様子を見せて、「君にそんなに興味はないし、闘ったりもしないよ」という意思を示しているのです。
また、犬同士が弧を描きながらゆっくりと近づき距離を詰めることがあるのも、敵意がないことを表す仕草のひとつです。噛まれると致命傷になるおなかや首筋などの急所を相手に見せることで、相手の警戒心を解こうとしているのです。
このような犬同士の作法は、幼いころにたくさんの犬とふれ合っていく中で、少しずつ身に付いていきます。もし、子犬を飼っているのであれば、幼いうちから多くの経験を積ませることをおすすめします。
著者:西川文二
発行:SBクリエイティブ(サイエンス・アイ新書)
価格:952円+税
オールカラー、224ページ
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