ペットの抜け毛でお手軽アート ニャンと帽子に大変身!
家中に落ちたり、服に付いたりと、悩みの種になりがちなペットの抜け毛。そんな「厄介者」を活用した小物作りが、「抜け毛アート」と呼ばれて広がっている。手触り感や、手軽さが人気。愛するペットを失った後の「ペットロス」にも効果があるようだ。
東京都多摩市の会社員山崎良さんとひろみさん夫婦は2016年夏ごろから、白、茶、グレーの飼い猫3匹の抜け毛を使った「抜け毛帽子」を作り、画像投稿のSNS「インスタグラム」に投稿を始めた。うさみみ帽子やとんがり帽子など100種類以上を投稿。良さんのアカウント「rojiman」のフォロワーは8万人を超えた。
作り方は簡単。ベレー帽風の「どんぐり帽子」ならば、必要な毛はラーメンどんぶり一杯分。まず、抜け毛をほぐし、少量ずつ足して団子型に丸める。それからくぼみを作って頭が入るようにボウル型に整え、最後に帽子のてっぺんをつまみ上げて飾りを作れば15分ほどで出来る。
同年春、抜け毛を髪の毛に見立てて猫の頭にのせ、リーゼントやトランプ米大統領風の髪形などを作ったのが始まり。「自分の毛だから落ち着くのか、かぶせても嫌がらなかった」とひろみさん。昨年6月には、山崎さん夫婦の抜け毛帽子約50種類を載せた本「ねこ、かぶり 抜け毛帽子でおめかしコレクション」(宝島社)も出版された。
■愛猫の抜け毛はシルクハット、愛犬の抜け毛でベレー帽
山崎さん夫婦の抜け毛帽子を見てまねる人もいる。堺市中区の家具職人、辻田光慶(みつよし)さん(46)は「ごみとしか思っていなかった抜け毛が……。発想がすごい」と舌を巻く。自らも飼っている猫の毛で挑戦。シルクハットが30分ほどでできた。
一般的な羊毛ではなく猫毛でフェルトを作る「猫毛(ねこけ)フェルト」を広めているのは、東京都世田谷区の蔦谷(つたや)香理さん。「猫毛フェルター」を名乗り、ワークショップや展示会を09年から東京や大阪、京都などで開いている。猫毛を洗剤液につけてフェルト化する。猫の人形を作ったり、そのままの毛をニードル針で布に縫い付け、マフラーのワンポイントにしたり。「猫毛祭り」と掲げたホームページで、展示会の日程などを紹介している。
猫だけでなく、犬の抜け毛を使う作品もある。
大津市の帽子作家つじいひでこさん(54)は5年ほど前、何げなくとっておいた愛犬の岳くんの抜け毛をフェルト化し、自分用のベレー帽を作った。かぶって出かけると、友人がほめてくれ、「作ってほしい」とも頼まれた。それを機にホームページで「犬帽」を紹介し、受注を始めた。
帽子一つに、45リットル容量の袋いっぱいの抜け毛が必要になる。「自分の毛で飼い主を温められるので、犬も喜ぶと思います」
■「ロス」癒やす効果も
長年一緒に暮らしてきたペットを亡くした飼い主が悲しみにくれる「ペットロス」。抜け毛アートには、そうした飼い主たちの心を癒やす効果もあるようだ。
大阪府吹田市の会社員水内香里さん(29)は2010年、17年間飼っていたシバイヌのラッキーを亡くした。半年ほど喪失感を引きずっていたという。ラッキーが生きているとき、5年ほど抜け毛をためたことがあった。形を変えて残したいとの思いから、15年、つじいさんに帽子の作成を依頼した。できあがった帽子を見て「色も触り心地もラッキーそのもの。身につけることができるから、そばにいるみたい」と喜ぶ。
ペットロスに詳しいヤマザキ学園大学動物看護学部の新島典子准教授(動物人間関係学)は「手触りや見た目で思い出すことができる。抜け毛を使った小物を手元に置けば、寂しさを紛らわせられる」と話す。生きているとき抜け毛を集めるためにブラッシングすることも、ペットの健康管理や飼い主とのスキンシップなどのメリットがあるという。
(藤波優)
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