相次ぐ多頭飼育崩壊 犬20匹取り残され、高齢の飼い主は入院
静岡県藤枝市岡部町の山中にあるトタンで囲われた土地に11月初め、シバイヌ20匹が取り残された。高齢の飼い主は入院。地主や保健所が再三、適正飼育を求めたものの、聞き入れられなかったという。相次ぐ「多頭飼育崩壊」に、県は頭を悩ませている。
関係者の話を総合すると、飼い主は70代男性。3年半前に岡部町の原野、約660平方メートルを借りた。地主が気付いた時には、男性はプレハブに住み、つながれていない犬が多数、敷地を走り回っていたという。近隣から「鳴き声がうるさい」「囲いを越えて逃げ出している」などの苦情が相次ぎ、当初から中部保健所と藤枝市が適正飼育を指導してきた。
だが、事態が改善されないまま、今年11月初めに男性が倒れ、入院。意識はあるが、話はできない状態が続く。20匹のうち、成犬2匹が間もなく死亡し、子犬2匹が里親にもらわれていった。地主は、動物保護ボランティア団体などに世話を頼んだ。朝、エサをやり、フンを片付けてもらう。残る16匹は県内の団体や個人に順次、引き取られ、里親への譲渡に向けて治療中だ。
県内では多頭飼育崩壊が相次ぐ。2008年には小山町で犬約100匹がケージ飼いされているのが見つかった。16年には焼津市でシバイヌのブリーダー男性が入院し、31匹が保護された。今年8月には富士宮市で、女性がトイプードル88匹の飼育を断念し、獣医師会とボランティアが新たな飼い主を探した。
県衛生課動物愛護班の調べでは今年8月時点で、崩壊の恐れがある10匹以上の飼育は犬12件、猫8件。一方、県は12年以降、犬猫の殺処分の半減を目指す「動物愛護管理推進計画」を進めてきた。昨年の殺処分は犬65匹、猫1450匹で、それぞれ12年の10%、34%にまで減った。だが、多頭飼育崩壊の恐れがある限り、ゼロを目指すのは難しいという。
県衛生課は「避妊手術の徹底や室内飼いを推奨しているが、多頭飼育の一因は飼い主の社会からの孤立や依存症に似た心理状況にあるとも言われており、解決が難しい。ボランティアの受け入れも限界に達しつつあり、何らかの法改正が必要だ」と話している。
今回保護された16匹について、ボランティア団体などで作る「チーム柴犬2」(https://team-shiba-inu.jimdo.com/)が里親希望や治療費などの寄付を呼びかけている。
(阿久沢悦子)
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