心に傷を負った犬の「不思議な行動」 寄り添った夫婦の思い

コルンを優しく見守る竹花さん夫妻
コルンを優しく見守る竹花さん夫妻

 千葉県内の夫婦のもとにやってきた1匹の保護犬。殺処分寸前のところを助け出されたその犬は、心に傷を負っていた。繰り返される不思議な行動、病気、そして老い。それらを丸ごと受け入れ、夫婦で「家族の一員」に寄り添った。


 2匹いた愛犬を立て続けに亡くし、長女(33)が嫁いでいくと、竹花家は急に静かになった。


 夫・晃さん(70)は「自分たちの年齢的にこれから若い犬は飼えない。犬はもういいかな」と思った。


 そう思いつつも、ついついインターネットでゴールデンレトリバーの情報を検索してしまっていた。最初に飼った犬で「娘のような存在だった」カリィと同じ犬種だ。


 そして飼い主募集サイトで出会ったのが、埼玉県内で警察に保護され、殺処分寸前に助け出された雄犬のコルンだった。


 2015年3月、ゴールデンレトリバーのコルンは推定7、8歳で竹花家にやってきた。


 立派な体格、フサフサの被毛、人なつっこいしぐさ。すぐに家族の一員になった。でも次第に、心に何かしら大きな傷を負っていることがわかってきた。


 昼夜を問わず家の中を歩き回り、時に頑として動かなくなる。散歩に出ると脇目も振らず、いつまでも歩き続ける。前の飼い主がよく車に乗せていたのか、なにかというと車に乗りたがる。1時間あまりドライブするとようやく、車のなかで安心したように眠る。


 妻・砂智子さん(64)が出かけるとコルンの様子がおかしくなるケースが多いことから、砂智子さんは、ずっと続けてきた稽古事をあきらめたことも。

 

コルンに声をかける竹花さん夫妻
コルンに声をかける竹花さん夫妻

 その半生で何があったのかはわからないが、コルンは不思議な行動をとり続けた。


 いくつもの動物病院を巡り、大学付属病院でも診療を受けたが、原因は特定できず、有効な治療法は見つからなかった。


 そのうちに、ガンが見つかった。昨年8月に手術をするも、既に転移していた。「子ども1人を毎月塾に通わせるくらいの病院代がかかります」(晃さん)。とはいえ、コルンのことを思えば当然の支出だと考えている。


 夜中に1、2時間も一緒に歩き回ったり、ドライブをしたりする必要があるから、体力的にもつらい。それでも砂智子さんは「最後まで、しっかりこの子につきあってあげたい」と話し、コルンの不思議な行動と病状を見守り続けた。


 ただ、前の飼い主への不信感は募る。砂智子さんは言う。「保護犬を飼うことが良いことだと報じられていますが、そもそも犬のことを考えたら、終生飼われることのほうが大切。ペットショップなどで買う『入り口』を、もう少し厳しいものにしてほしい」


 ガンのせいか、この1、2カ月でコルンの足腰は急激に弱った。やせ細り、日に日に衰えていくが、それでもまだ時に歩き回ろうとすることもあった。夫婦2人でそんな愛犬に寄り添い、砂智子さんは献身的な介護を続けたが、12月18日、コルンは亡くなった。


 最後は寝ながらオシッコをしてしまうような状況だったが、大きく苦しむ様子は見せずに旅立ったという。「心に大きな穴があいてしまった」と夫婦は口をそろえる。火葬されたコルンはいま、通い慣れた動物病院や近所の人たちから贈られた花々に囲まれている。


(太田匡彦)

朝日新聞
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