譲渡が広がり、殺処分数は激減 でも「最後まで責任もって」
徳島の動物愛護管理センターが受け入れる犬や猫はさまざまだ。中には、「飼えなくなったから、センターで引き取ってください」と連れてくる人もいる。
そんな時、センターは安易には引き取らない。「飼い主の責任で次の飼い主を探して、生存の機会を与えてください」と説得する。2013年に動物愛護法が改正され、都道府県は場合によっては引き取りを拒否できるようになった。
県内の殺処分数は昨年度896頭。初めて1千頭を下回った。センターが開設された03年度(1万263頭)の実に約8・7%だ。
処分数激減の背景には、受け入れ数の減少があるという。同センターの富久裕介主査は「県内は吉野川の河川敷など、野犬がたむろしやすい場所が多い。ただ、以前に比べて無責任にえさをやる人が減り、飼い主不明の犬の引き取りが少なくなった」と話した。「ふびんに思うことは動物愛護の大本の感情かも知れない。それでも、えさをやるのはやめてもらいたい」
殺処分数が減ったもう一つの理由は、センターによる譲渡の増加だ。開設当初はほとんど実施していなかったが、11年ごろに制度化した。現在は毎月2回、譲渡会を開いている。昨年度は収容した犬と猫の28・3%に当たる437頭が引き取られた。
譲渡会には誰でも参加できるわけではない。参加希望者は2週間前までにセンターに申請書を出し、審査を受ける。家族の同意に加え、周囲の環境、住居は持ち家か借家か、などの項目から、最後まで責任を持って飼育できるかどうかを判断される。
譲渡会ではまず、参加者は講習を受け、ふんの始末や狂犬病の予防接種など、飼い主としての責任と義務を学ぶ。犬の習性、接し方などに加え、県の殺処分の現状も知らされる。引き取りにあたって、マイクロチップ登録料や感染症予防のワクチン接種代などを払い、飼い主になる。
殺処分を待つ犬や猫がいる「保護房」の部屋を出て、譲渡先が決まった犬や猫を見に行った。
外に並んだ手作りの小屋でくつろぐ成犬。部屋の中ではケージから顔をのぞかせ、子犬たちがしっぽを振っていた。このスペースはもとはけがや急死した犬や猫の隔離場所だったという。「譲渡事業が広がって手狭になり、やむなくここを使っています」とセンター職員は話す。
中庭付近では、建設工事が進む。来年3月のオープンを目指す「譲渡交流拠点施設」だ。1億1千万円かけた鉄骨2階建て延べ約320平方メートル。犬と猫を合わせて最大100頭収容できる。1頭ごとの管理ができるため、感染症予防やストレス軽減にもつながるそうだ。
(佐藤祐生、福家司)
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