火葬場に向かうトラックで殺処分 死と隣り合わせの動物たち
徳島県神山町阿野の静かな山里に、県動物愛護管理センターはある。警察や保健所などを通じて県内で保護された犬や猫たちがいる収容棟に足を踏み入れると、「ワンワン!」と元気な声が聞こえてきた。
長靴に履き替えて消毒槽を進み、奥へ。薄暗い中にステンレス製の柵で隔てられた檻(おり)が七つ、横一列に並んでいた。計約60平方メートルの「保護房」。ここには成犬だけが収容されているそうだ。ほかにも子猫、子犬、譲渡される犬、猫が収容されている部屋があった。
近づくと、人なつっこく寄ってくる犬もいれば、顔を伏せて静かに丸まっている犬、離れて警戒している様子の犬もいた。
センターに連れてこられた犬や猫は、病気の有無や性格などを調べられ、問題がなければ、希望者への譲渡の対象になる。だが、譲渡できないと判断されたり、引き取り手がいなかったりすると殺処分される。
「健康な犬や猫でも元の飼い主への依存が強い場合、新しい飼い主に懐かずにセンターに戻されたり、捨てられたりすることもある」と職員。一方、「スペースに余裕があれば、犬のためにもできるだけ長く置いている」とも。この日は、3週間ほど保護房で過ごしているという秋田犬もいた。
保護房の奥に、「鎮静器」という金属製の箱(縦横1・2メートル、奥行き1・5メートル)につながる通路がある。職員が操作盤のボタンを押すと通路後方の壁が前へせり出し、犬猫が鎮静器側に逃げざるを得なくなるという仕組みだ。
犬猫が入った鎮静器はトラックに乗せられ、センターを出発する。やがて、内部は二酸化炭素で満たされる。出発から約1時間、県西部の火葬場に着く頃には、犬猫は動かなくなっている。車中で殺処分をするのは、「センターで動物を殺さない。焼却しない」という地元住民との約束があるからだ。
センターでは毎年開く「動物愛護のつどい」で、希望者に収容棟を見学してもらっている。
今年9月のつどい。鎮静器の前に見学者を集めた職員は「鎮静器に誘導するボタンを押すのは、職員の誰もがしたくない仕事」と話した。親子で見学した徳島市八万町の主婦佐藤紗織さん(35)は「子どもが犬を飼いたがっていますが、現場を見て衝撃を受けました。飼うなら最後まで飼ってあげたい」と話した。
同センターには、国内外から殺処分などへの抗議文が日々届く。ある職員は「個人として気持ちは分かるが……」と漏らした。
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県動物愛護管理センターは動物たちの生死を分ける施設。人間の無責任な行為が動物たちを死に追いやっている。動物と人とのよりよい関係を模索する現場を歩いた。
(佐藤祐生、福家司)
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