「大久野島のうさぎに起きていること」 写真家utaさんに聞く

 前回から少し間が空いてしまいましたが、今回も引き続き、広島県の大久野島で暮らしているうさぎについてご紹介します。大久野島でうさぎの撮影をライフワークとし、生活環境の改善のために活動している「うさぎ写真家」utaさんに最近の状況を聞きました。(うさぎと暮らす編集部)


葉っぱを仲良く分け合う親子(写真/uta)
葉っぱを仲良く分け合う親子(写真/uta)

 まず、大久野島は瀬戸内海に浮かぶ周囲約4kmの小さな島ですが、別名『うさぎ島』と呼ばれるほどたくさんの(約1000匹)うさぎが暮らしています。このうさぎたちは40年以上前に島外から数匹放され、島には天敵が少なかったため、繁殖してきたと言われています。


 近年はテレビ番組やSNSで観光客がうさぎとたわむれる姿が報じられ、観光客が急増しました。宿泊施設の休暇村周辺にいるうさぎは人を見るとご飯がもらえると駆け寄ってきます。観光客もラビットフードを持参し、うさぎとふれあうことを目的とする方が多いのです。ほぼ野生に近い状態で暮らしていたうさぎたちの生活環境は現在までに少しずつ変化してきました。

 

 

島のうさぎたちの食生活

「本来、島のうさぎさんは自然のもの『落ち葉、葉っぱ、木の皮、木の根っこ、草、木の実(ビワ、カキ、いちじくなど)』などを食べて生活しています。水は島の環境とうさぎさんの数の均衡が保たれていれば、葉っぱなどを食べること、雨が降ることで、水がわいている場所があるので、そこで水を飲むこと、雨の恵みである水たまりで補給できると考えています。私たちが島へ通い出してから一度だけ、水不足が続き、さすがにその時は人間の手助けをするべきではという思いがあり、私たちも水飲み場の提案などをした過去があります。ただ、人間からご飯(主にラビットフード)をもらうことで、乾かなくてもよいはずののども乾きやすくなります。ですから、人が多く訪れる場所(休暇村本館前や第二桟橋)では、時に人間の手助けがいるのかなとも思います」とutaさん。


 以前は島の各所にうさぎの水飲み用の器を用意したこともあるそうです。しかし、過剰に手助けをするのではなく、あくまでも様子を見て行うようにしているのです。

 

 

夏は観光客も増えて…

「夏は『バケーション』色が強いため、うさぎさん目的ではない観光客の方もたくさん島を訪れます。これまでも普段とは違った問題が起こりがちでした。例えば花火。うさぎは前述したように人に近寄ってくるので、いたるところで花火をされてはうさぎたちが危ない。今年は、何年もかけて休暇村のスタッフと話をしてきたおかげで、花火ができる場所が指定されたスペースのみに改善されました。きちんとしたルールができたのでよかったと思っています」。

 

 

イノシシが出没するように…

「10年以上前から、島にはイノシシがいました。しかし、ほとんど人の前に出てくることはなく、夜になると出てくる程度でした。もちろん、うさぎさんを襲うところなんて見ることはありませんでした。ですからうまく共存しているのだとばかり思っていたのですが、今年に入り、私たちもイノシシがうさぎさんを襲う場面を目撃してしまいました。これは、人間の持って行った『うさぎさん用のご飯』が大量に残っている状況が引き起こしたのだと思っています」。


 観光客が増えた今、島のうさぎさんたちには食べきれないほどのご飯が各所に残っています。それを食べに来たイノシシが、始めはつい出来心でうさぎを狙ってみたら狩りに成功してしまった―。これに味をしめたイノシシが、仔うさぎを狙うようになってしまったのではないかという説が有力のようです。

 

出没するようになったイノシシ(写真/uta)
出没するようになったイノシシ(写真/uta)

島のために活動していること

「私たちは大久野島に17年通い続けてきました。始めのころは、うさぎさんを抱っこするのは当たり前に見かけましたし、耳をつかんで持ち上げる人、うさぎを蹴とばす人などがいました。ただ、大久野島のうさぎさんは、複雑なしがらみの中で生きているので、ただやみくもに騒ぎ立てるのは、逆効果になるんです。ですので、多方面の立場などを理解したうえで行動していきたいと今でも思っています」。


 7、8年くらい前までは、うさぎさんと接する際の注意事項を書いた看板や貼り紙などは全く存在しておらず、抱っこしたうさぎさんを落として骨折したり、けがをするうさぎさんが多かったと言います。そこで何年もかけて休暇村の人たちとの信頼関係を築き、抱っこ禁止の看板なども、ようやく立ててもらうことが出来たそうです。それが功を奏し、現在は抱っこをする人が劇的に減っています。


 前述したようなうさぎのご飯問題についても変化してきています。「パンや人間の食べ物などをあげる人も多かったので、各所に注意書きをしたりHPなどでも注意をしてもらえるようになりました。また、車にひかれて亡くなってしまううさぎさんが、時々居たこともあり、島での車のスピードのことも、何年も注意を促し、数年前よりスピードも落としてくれるようになりました」。

 

抱っこ禁止の看板(写真/uta)
抱っこ禁止の看板(写真/uta)

うさぎ島に実際多い捨てうさぎ

 utaさんが行ってきた活動はこれだけではありません。


「ずっと隠していたことなのですが、数年前までは、島に捨てられるうさぎさんも多く、水面下で保護をして里親探しをしてきました。捨てられた子を、すべて保護は出来ませんでしたが、20匹ほどは里親さんを見つけさせていただきました。一時的に我が家の子になった子もおりました…」。うさぎがいるからうさぎを捨てに行く人がいるなんて、耳を疑う話しです…。


「なぜ水面下でしていたかというと、保護をしているということが広まってしまうと『保護をしてもらえるなら捨てに行こう』と思う人が増える可能性があったからです。今は、観光客が増えているので、人の目が多く、捨てにくい状況になっているので、捨てられる子は少なくなりました。また、この記事を読まれるような方は、だから捨てに行こうと考える人はいないと思うのでお話しさせていただいています」。

 

 

批判しても解決にならない…

 utaさんは島への観光目的の方々にうさぎの生態を理解してもらうために歩み寄る姿勢も忘れていません。


「私たちが心がけているのは、うさぎさんが大事だからこそ、そのうさぎさんを取り巻く人間たちも大事にしないと、うさぎさんは救われないと考えています。島に観光で訪れる人は、みんなうさぎさん第一ではないのが事実です。なので、そんな人たちに分かってもらわなくては、何も変わりません。批判をするのは簡単なことですが、理解をしてもらうことはとても大変です…。ですので、実際に動いて下さる人たちのことも考えることが出来るようにと心がけています。大久野島のうさぎさんは、とてもとても可愛くて…。私たちはもう、家族のような感覚でいるのが事実です。その家族同然の子たちが、『可愛そう』だと思われることがとても辛かったりします。けがをしている子をむやみにネットにあげたりしているのを見ると、とても心が痛みます。なぜ、その子がけがをしたのか…それを考え、どうすればけがをしないか、ある時は休暇村にお願いをしたり、あるときはブログなどで皆さんに呼びかけをしたりしてきました」。


 最後に観光客の方々へのお願いを伺いました。


「たとえうさぎさんがけがをしていても、生命力にあふれて輝いている大久野島のうさぎさんたちをしっかりと心に焼き付けてきてほしいと願っています。それが、一生懸命生きている彼らへの敬意だと私たちは考えています」。

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