「責任もって飼育を…」 野良猫たちを助ける新潟の取り組み

公園でえさをもらう猫。不妊・去勢手術をした証しとして耳がV字にカットされている=新潟市東区船江町の山の下海浜公園
公園でえさをもらう猫。不妊・去勢手術をした証しとして耳がV字にカットされている=新潟市東区船江町の山の下海浜公園

 新潟県内の猫の殺処分数が昨年度、統計がある1952年度以降で初めて1千匹を下回った。行政と民間による取り組みが功を奏し、救われる命が増えている。その一方で、あちこちで命を落としている野良猫の数は計り知れない。人と動物の共生は簡単ではない。


「道路で動物が死んでいます」。新潟市西区の清掃事務所には、ほぼ毎日、こんな連絡がくる。職員は回収に向かう。車にひかれていることが多いが、用水路に落ちていたり、病気や老衰で息絶えていたり。車のボンネットに迷い込んだ末に死んでいたこともあった。


 動物の種類はタヌキやハクビシンなど様々だが、一番多いのは、猫。同事務所が昨年度回収した2957件のうち、猫は1286件。ほとんどが野良猫だ。職員の板垣俊仁さん(58)は「車にひかれると、つぶれて目も当てられない。かわいそうに」。


「野良猫の一生は壮絶で、明日をも知れぬ生活です」と話すのは、動物の保護活動などを行っている新潟市内の団体「新潟動物ネットワーク」代表の岡田朋子さん(51)。飼い猫は20年以上生きることもあるが、野良猫の平均寿命は3~4年という。病気への感染や食べ物が見つからなければ、死に直結する。子猫は、カラスやキツネに食べられる。


 野良猫は、元をたどれば飼い猫だ。野生の猫は、イリオモテヤマネコのような珍しい猫でない限り、いない。猫の繁殖力は高く、生後半年から出産できるようになり、年に2~3度、一度に6匹前後を産む。猫が一度に6匹産み、生まれた猫が半年後に子猫を産む(半数がメスと仮定)……と考えていくと、1年で79匹に増える計算になる。人間の身勝手さ、無責任さのしわ寄せが猫に向かう。

 

車にひかれたとみられる猫を回収する清掃事務所の職員ら=新潟市西区
車にひかれたとみられる猫を回収する清掃事務所の職員ら=新潟市西区

 ■新潟市では「地域猫」活動

 殺処分される飼い猫や野良猫もたくさんいる。県と新潟市の動物愛護センターでは、昨年度933匹が殺処分された。約6割が生後90日以下の子猫だった。


 殺処分の数自体は減っている。2013年の改正動物愛護管理法施行で、飼い主が最後まで飼い続ける義務が明記され、動物愛護センターが引き取りを拒否できるようになった。「本当に飼えないのか」「新しい飼い主を探したのか」などと説得し、280件は引き取りを思いとどまらせた。


 加えて、行政や民間による地道な取り組みの効果もある。収容する猫を減らす「入り口」と、収容した猫を新しい飼い主に譲る「出口」の対策だ。


 新潟市には、「地域猫」活動というモデル事業がある。野良猫は繁殖し続けて数十匹が集団で暮らす場合がある。対処に困った住民自治会などが不妊・去勢手術を施し、再び野に放つ。その後は、えさやりやフンと尿の処理も住民が行う。繁殖を防げれば、一代限り世話をすればよくなる。


 手術費用は一般的にメスは2万~4万円、オスは1万~2万円。モデル事業として認められれば無償となる。個人などが行う場合は、新潟市や県が計上した予算の範囲内で、メス1万円、オス5千円が助成される。


「出口」には、各地の動物愛護センターなどが行う譲渡会がある。2日、新潟市動物ふれあいセンターで開かれた譲渡会には10組が参加。気に入った人が連れ帰り、この日は23匹中8匹が新しい飼い主の元へ。残りの猫たちは、次の機会を待つことになる。


 譲渡用の猫を提供する新潟市動物愛護センターによると、昨年度は277匹が譲渡された一方、504匹を殺処分した。7割以上が、手のかかる子猫だった。宇野匠所長は「子猫にミルクをあげるボランティアが増えれば、殺処分を免れて、譲渡会に出せる猫が増えるはずだ」と話す。

 

 

 ■「増え続けて飼えない」表面化

 さまざまな取り組みが定着してきた一方、最後まで飼いきれない人は後を絶たない。近年、表面化しているのが「多頭飼育崩壊」という問題だ。増え続けて飼いきれなくなることを「崩壊」と表現している。


 上越地方の山間部にある一軒家。70代女性と40代の息子の2人暮らしで、女性は「17匹飼っている」という。だが隣人も猫を飼い、両家を行き来している。「本当は20匹くらいいるのかも」。床、障子、座布団など部屋中にひっかいた跡があり、台所の天井がフンと尿の重さに耐えきれず落ちたこともあったという。


 30年ほど前、オスの捨て猫を飼い始めたのが始まりだった。20年ほど前にメスが迷い込んだのを機に増え始めた。女性は「去年は3匹、今年は春に3匹、夏に4匹生まれた。こんなに増えるなんて……」。


 女性はヘルパーに生活支援をしてもらっており、ヘルパーの依頼で今月1日、動物保護活動をする上越市の民間団体「しっぽのなかま上越」の泉田美代子さん(54)が女性宅を訪問した。「目が痛くなるくらいひどい家もあるけど、ここはまだきれい」。子猫は新たな飼い主を見つけやすいため、団体が保護。女性は「猫のいない生活は考えられない」というので、成猫に不妊・去勢手術をして飼い続ける予定だ。


 泉田さんによると、多頭飼育崩壊は、高齢者や経済的に苦しい人に目立つ。寂しさなどから飼い始め、最初の1匹の不妊や去勢手術を受けさせる資金も知識もなく、増えていく。周囲から孤立している人が多く、「猫の問題というより人間の問題。継続的な支援をするために、行政ともっと連携する必要がある」。


 結果として、動物愛護センターなどに駆け込み、殺処分につながってしまう。県動物愛護センターの阿部久司センター長は「一度に何十匹も持ち込む人がいる限り、殺処分数はゼロにはならない。本当に最後まで責任を持って飼えるのか考えてほしい」と話す。


(田中奏子)

朝日新聞
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