明るいペット専門の仏具店 ペットを失った人に寄り添い、笑顔に
犬や猫などペットと一緒に暮らしていれば、避けては通れないペットとの“永遠の別れ”。その悲しみ、辛い気持ちにそっと寄り添おうという店がある。
(末尾に写真特集があります)
ペット用の仏壇・仏具を販売する「DEAR PET(ディアペット)」。ペットメモリアル専門店として、ネットショップのほか、「日本で唯一」という実店舗も展開している。
「来店されたお客様は、仏壇・仏具を買わなくてもいいんです(笑)。スタッフにペットの思い出話をしていただいて『ちょっとすっきりしたわ』と言って帰ってくださるだけで、ディアペットがある意味があります。そんなお店でありたいと思っています」
こう語るのは、ディアペットを運営する会社「インラビングメモリー」取締役で、店舗運営責任者の関口真季子さん。
実店舗の1号店である青山店は、東京・南青山にあり、仏壇・仏具の専門店とは思えないほどカラフルで明るい雰囲気に包まれている。
「ペットの場合、お骨を自宅に置きたいという方が非常に多いんです。そこで、写真を入れるタイプの仏壇が誕生しました」
1000種類以上ある商品のなかでも、骨壺がぴったり収まるタイプの仏壇は人気商品のひとつだという。コンパクトで、最近の住宅事情にも適している。ペットの写真入りの位牌や、ペットのお骨や体毛を入れて持ち歩けるキーホルダーも売り上げの上位に入るという。
仏具は人間用のものより小さめで、肉球などをあしらったかわいらしいデザインが多い。小さくても、いずれも作りは本格的だ。職人の手で作られた本格的な盆ちょうちんを販売すると、話題となってメディアの取材が相次いだ。
ディアペットがペット用の仏壇・仏具を取り扱うネットショップを始めたのは、2008年7月。母体となるさいたま市にある企業の代表がお寺の次男だった関係で、2003年に最初は人間用の墓石屋として開業した。現在はネットショップが4店舗、実店舗も4店舗(東京・青山、大阪、名古屋、さいたま)を構える。
「お店を始めた頃は、ペット専門の仏具店はなく、ペットを亡くしたお客様から『こんなお店があるなんて、本当にありがとう』というお声をいただきました。それとは逆に、『なぜ動物にそこまでするの?』というマイナスのお声もあるような時代でした」
関口さんは立ち上げ当初、梱包・配送のパートスタッフとして入社した。少しずつサイト運営などに携わるようになり、今ではディアペットの店舗代表だ。大の動物好きで、犬や猫、イグアナや熱帯魚の飼育経験があり、現在は3匹の猫を飼っている。
「私自身、動物との死別の経験がありますし、親との死別もありました。“死”と向き合う経験が、他の方の力になれるところがこの仕事の魅力です」
ペットロスの悲しみは、周囲に理解されないことも多いという。家族間であっても温度差がある場合もあり、辛い気持ちの行き場を失い、長期間苦しんでしまう人もいる。
「お電話や店舗でスタッフとお話をするのはもちろん、そもそもこういう店があると知るだけで、ご自身が悲しい、辛いと思うことが普通のことだと気づいていただけると思います。仕事にしている私自身ですら、ペットロスは何度経験しても慣れることはありません。それぞれの子に思い出がありますから」
ペットロスの悲しみは、すぐに癒えることはない。しかし、仏壇や仏具を用意し、供養することが、生活の一部になることで、少しずつ死と向き合い、心の整理をする手助けになる面もあるだろう。また、こうした店舗の存在自体が、ペットとの別れを経験したことがない人もペットロスを知るきっかけにもなる。
「私たちは、ペットを亡くされた方を笑顔にすることを一番の目的としています。悲しい、辛いというのは当然ですが、そうしたなかでペットロスが癒され、辛い気持ちが薄らいでいくことをお手伝いさせていただきたいです。当店はペットロスの経験があるスタッフばかりなので、安心してお話していただきたいです」
今後は、保護犬、保護猫の支援活動も視野に入れているという。ペットの思い出と飼い主の現在、そして、この先ペットとして幸せに暮らしてほしい動物たちにも心を寄せている。
(安田有希子)
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