犬、猫、オウム…動物の落とし物年1000件 警察でエサやり
犬や猫、鳥やカメ、はてはフクロウやハリネズミまで……。警視庁にはさまざまな動物が「落とし物」として届く。昨年の届け出は約1千件。傘や財布と違い、こうした落とし物が困るのは、放っておくと、体が弱ったり、死んでしまったりすることだ。警視庁は慎重に取り扱い、飼い主に返している。
5月下旬の午後。上野署に、千代田区に住む男性会社員(30)が慌てた様子で飛び込んできた。会計課の入り口で、保護されてケージに入った大型インコのヨウムと「再会」すると、表情は一気に緩んだ。
ヨウムはアフリカ西海岸の森林地帯に生息。体長30センチほどで、知能が高く、人の言葉をよく覚えることからペットとして人気がある。男性は2年前に25万円で購入。可愛がっていたがこの日の午前6時半ごろ、窓を開けた隙に外に飛んでいったらしい。
逃げたとみられる1時間ほど後、「ペットと思われる鳥が道路を歩いている」と110番が入った。保護されたヨウムの情報は署から連絡を受けた鳥の愛好家を通じてネットで広まり、飼い主につながった。
「おなかをすかせているはずだ、と会社を早退して署に来たら水を飲ませ、餌まで与えてくれていた。丁寧に扱ってもらい、感謝です」と男性は頭を下げ、鳥と帰っていった。
遺失物法上、ペットは「準遺失物」にあたる。警視庁では各署に動物保管用のケージを常備し、署員が餌をやりながら持ち主を捜す。必要なら一緒に散歩もする。特殊な動物の場合はインターネットや動物園を頼りに種類を特定し、飼い方を調べるという。
小型犬ブームもあり、最近は室内で飼われるペットも多い。首輪を付けていない犬が拾われ、飼い主の特定が難しいケースも目立つという。マイクロチップを体内に埋め込んだ動物が増えつつあるため、警視庁遺失物センターは一昨年、読み取り機を各署に配った。
落とし物の保管期限は3カ月。だが動物の場合、そうはいかず、一両日中に飼い主が現れなければ、警察側で預かり手や引き取り先を見つける。拾ってくれた人が引き受けてくれることもあれば、ペットショップや動物園、学校に頼むこともある。
センターによると、昨年1年間で警視庁に届けられた動物は1082匹。犬が575匹で最も多く、インコが140羽、猫が133匹、カメが71匹と続いた。このうち飼い主に返されたのは、犬猫で約7割。それ以外の動物は約2割だった。センターの大久保昭二所長は「なかには捨てられた動物もいると思うが、飼われていた形跡があれば飼い主を全力で捜す。専門家ではないので扱いは大変ですが……」と話した。
(西村奈緒美)
落とし物情報は警視庁のウェブサイトで公開されている
■警察署以外の動物の相談窓口
<犬、子猫、負傷動物など>都動物愛護相談センター(世田谷区)
03-3302-3507
都動物愛護相談センター多摩支所(日野市)
042-581-7435
<負傷動物(夜間、週末の緊急時)>
都保健医療情報センター(新宿区)
03-5272-0303
<野生鳥獣>
都計画課鳥獣保護担当(都庁)
03-5388-3505
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