古民家で保護猫と出会える「月猫カフェ」 店長の愛猫もお手伝い
富山市の中心部から車で20分ほど、田園風景の中に、古民家を活用した保護猫カフェ「月猫カフェ」がオープンした。5年ほど前から猫の保護ボランティアに携わってきた田畑智真紀さん(50)が店長を務めている。築100年の木造家屋をリフォームしたレトロな空間で猫と触れ合いながら、保護猫カフェの意義を考えてみた。
(末尾に写真特集があります)
木造家屋は2階建てで、もともと診療所と居住スペースが一緒になった建物を買い取ったもの。日本庭園に面した縁側とリビング、床の間のある和室を「猫カフェスペース」として開放している。リフォームに際して、縁側の窓の上やリビングの鴨居にキャットウオークを設けた。
客は猫が跳び上がったり、走り回ったりする様子を間近に見ることができる。利用料は1時間当たり1200円(ドリンク付き)で、店頭では募金も受け付けている。収益金・寄付金は保護猫のえさ代、医療費、カフェの運営費に充てる。
「今、保護しているのは4匹です。『スタッフ不足』なので、我が家のちびこ(メス)とみーちゃん(同)にもアルバイトしてもらっています」と田畑さん。保護猫のぎんじ(オス)と、ちゃろ(同)は病気に感染していないかなどの検査結果が出るまで待機させており、くろ(同)はけがをしておりケージの中に。おはぎ(メス)だけでは少ないので、店長の愛猫2匹が応援に駆け付けたというわけだ。
田畑さんはこれまで、飼い主が高齢になったり、転居したりするなどして、飼い続けられなくなった猫に新たな飼い主を見つける活動に取り組んできた。子猫は比較的早く貰い手が見つかって慣れていくが、成猫は時間がかかる。この日も、おはぎは人見知りをして、火鉢の中に隠れたままだった。
「保護猫の活動をしていると、『うちの庭に野良猫がいるから何とかしてほしい』という依頼を受けます。しかし、野良猫を飼い猫にするのは難しい。地域猫として見守るにしても捕獲して、去勢・避妊手術をする必要があります」
「保護猫カフェ」というと、気軽に猫と遊んで、気に入った猫がいれば「飼ってあげよう」と考えがちだが、そう簡単ではない。また、野良猫を安易に託せる場でもないのだ。
月猫カフェは「猫と人間がお見合いする場」といえる。その仲人が田畑さん。飼い主志願者がいれば、面談して、飼うための環境が整っているかを確認。えさ・猫砂・トイレなどの必需品を安価で譲り、2週間の「お試し期間」を経て「大丈夫だ」とお互いに納得してから正式に猫を託す。
田畑さんは「月猫カフェは『猫との暮らしを体験できる場に』との思いで開きました。猫を飼ったことがない方が猫との生活を始めるきっかけになればと思います」と期待を込める。客は猫と遊ぶだけでなく、アレルギーが出ないかどうかの見極めをする機会にもなる。トイレは目に付く場所に置いてあり、ふんやおしっこのにおいもする。「猫を飼う楽しさだけでなく責任の重さも知っていただきたい」と強調する。
田畑さんは来店者に月猫カフェの案内とともに、「月猫のきもち」と題したリーフレットを配布し、猫の去勢・避妊手術の必要性を説いている。増え続ける野良猫についての記述はこうだ。
《猫は「ねこ算」で増えます。ある日、母猫のみけからオス2匹とメス2匹が生まれました。半年後には子猫も大きくなって孫猫ができ、その間にみけも2度の出産。それから孫猫も大きくなって……。猫の妊娠率はほぼ100%。1回の出産で4~6匹生まれます。妊娠期間はおよそ2か月で、多ければ年3度も出産します。じゃあ、1匹の猫から何匹に増えてしまうの?1年で50~80匹》
「えさやりだけでは野良猫を救うことができない」という気付きを促すことも月猫カフェの役割だ。
月猫カフェで猫の写真を撮り、猫をおもちゃで遊ばせていると、あっという間に1時間が過ぎた。飼い猫の自慢をしたり、ほかの猫カフェの情報を交換したり……。猫好き同士は自然に会話が弾む。
60代の女性が「あら、こんにちは」と声を掛けてきた。筆者の自宅でも3匹の猫を飼っている。先日、庭先で遊ぶ猫を見て「最近オープンした月猫カフェって、この近く?」と道を尋ねてきた女性だった。帰り道には我が家に招き、愛猫と遊んでから帰宅された。
保護猫カフェ、人間の交流にも、ひと役買ってくれているようだ。
(若林朋子)
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