捨て犬が多いのに愛称にネコ?…「しゅうニャン市」予算可決
山口県周南市が1月から取り組んでいる「しゅうニャン市」プロジェクト=キーワード。関連事業費を盛り込んだ新年度予算案が、15日にあった市議会の最終本会議で激論の末に可決された。木村健一郎市長は「シティープロモーションの切り札」と位置づけ力を入れるが、「税金の無駄」と反発する市議との溝は埋まりそうにない。
「これほどの反発にあうとは予想していなかった。反対の方々の知恵やアイデアもいただきながら、『しゅうニャン市』を前へ前へと進めていきたい」
本会議終了後、記者団の取材に応じた木村市長はそう言って笑顔を見せた。
この日、プロジェクトに反発する市議は9人の連名で、関連事業費を削除し、同額を予備費に回す修正案を提出。「予算化は将来の街づくりに大きな禍根を残す」などと提案理由を説明した。その後、計17人が賛成、反対の立場から討論を繰り広げ、採決の結果、1票差で否決された。
なぜ、こうも多くの反発を招いたのか。
「これまでの市長の政策に間違いはないと思うし、これからも支持していく。だが、『しゅうニャン市』だけはもう少し慎重であってほしかった」
1、2日にあった一般質問。ベテラン市議の1人が語気を強めた。この市議が批判したのは、愛称が「南(なん)」を「ニャン」と入れ替えただけに過ぎず、ネコにゆかりのある街でもないという点だった。「歴史や文化に裏付けられた愛称なら異論はないが、単なる語呂合わせ。神聖な市名をもてあそばれることに不快感を感じる」と話した。
「動物愛護」や「野犬対策」についても、疑問や意見が相次いだ。
広い周南緑地を抱える市内は、捨て犬が大繁殖。2015年度に県内全体で捕獲された野犬1354頭のうち、半数にあたる685頭を周南環境保健所管内が占める。ペットが大切にされていない街が、ネコを愛称にして世間の理解を得られるのか、というわけだ。「殺処分ゼロ、動物愛護日本一を目指したらどうか。さすがしゅうニャン市と全国の喝采を浴びる」と提案した市議もいた。
だが木村市長にとって、「しゅうニャン市」はあくまで、知名度の低い「周南市」を知ってもらうための愛称だ。市は今後も、特設サイトの拡充やPRグッズの作製などに力を入れる方針。反発する市議たちは「納得できない」として、プロジェクトの行方を今後も注視していく考えだ。
(三沢敦)
<しゅうニャン市プロジェクト>
昨年4月1日のエープリルフールに合わせた動画で、しっぽを付けた木村健一郎市長が猫(ネコ部長)とともに記者会見し「しゅうニャン市になります」と宣言した。猫好きの市民グループの提案に市が協力した企画だが、思わぬ大反響を呼んだ。
親しみやすく、覚えやすい語感が、全国的に知られていない「周南市」の認知度向上につながると考えた市は1月、「しゅうニャン市」を市の愛称に決定。インターネットに特設サイトを開設し、ロゴ入りのポスターや特製缶バッジを作製するなどPR作戦に乗り出した。
新年度当初予算案には関連事業費として2500万円を計上した。
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