倉科カナさん、保護猫を迎える 「同世代に伝えたい」
不幸な犬や猫を減らしていきたい。日本のペットたちが置かれた一部の劣悪な環境を知ると、多くの人がそう思う。でも何から始めればいいのかわからず、そこで立ち止まってしまう――。そんな中で、女優の倉科カナさんは今年、保護猫を迎えることで一歩踏み出した。その思いを聞いた。
倉科さんが迎えた保護猫の雪(せつ、メス)は、まだ離乳前にやってきた。動物病院にまとめて捨てられた子猫のうちの1匹だった。
「うちに来た時はまだトイレも自分でできない子猫でした。ちょうど実家から母が来ていたので、母の助けを借りながらミルクをあげ、トイレをさせて、離乳まで持っていきました。成猫を飼おうと思っていたのに、幼い子が来たので驚きましたが、しっかり成長してくれて本当にかわいい」
保護猫を飼うきっかけとなる出来事が昨春あった。映画「3月のライオン」(前編18日、後編4月22日公開)の撮影中のことだった。
「あるお宅を借りて撮影をしていると、床下にミィミィと鳴いている子猫が4、5匹、いたんです。その時に、私にも何かできることはないだろうかと強く思いました。すぐに動物の問題に取り組んでいる先輩の女優さんに電話をして、相談しました。その方からアドバイスをいただいて、私のような立場、世代だからこそできることがあると気付きました」
熊本の実家はかつて、ブリーダーをやっていた。いつも10匹以上の犬に囲まれて育ち、毎日朝晩、何往復も犬たちの散歩をした。子どものころの夢は動物看護師になることだった。
それだけに、ペットショップでの生体販売を巡る問題には以前から関心が高かった。一部で行われている繁殖用の犬猫への虐待的な扱いや、ペットショップで売れ残った子犬・子猫の「在庫処分」などに心を痛めていた。
そして昨年9月、飼っていたエキゾチックショートヘアのハジメ(オス)が腎臓病で死んだ。
「ハジメちゃんがまだ5歳だったのに腎臓病で亡くなってしまい、すごいペットロスになりました。それからもう一度、猫を飼いたいなと思った時に、ペットショップで買うのではなく、保護猫を迎えることにしたんです。そうすることで、保護猫を飼うということや、明るくてきれいなペットショップの裏側で命を落としている犬や猫たちがどれだけいるのかということを、同世代やもっと若い子たちに知ってもらえたら、と思っています」
犬や猫を流通・小売業であるペットショップで本格的に販売するようになったのは30、40年前のこと。つまり倉科さんたちは「生まれたときからペットショップがあった世代」。だからこそ、同世代やより若い世代にメッセージを届けたいと考えたのだ。
迎えた雪はいま生後4カ月。やんちゃ盛りの行動に癒やされる。ゆったりした性格だったハジメに比べると、雪は「野性味あふれる感じで、ジャンプ力がすごい。性格がツンデレなのもめちゃくちゃかわいい」と話す。
ただ、倉科さんがトイレやお風呂に入っていると、扉の前で鳴き続けるなど、少し分離不安のような症状が見て取れるという。そのためもう1匹、今度はブリーダーから猫を迎えようと考えている。
「ちゃんとしたブリーダーさんから迎えるのは、私は良いことだと思っています。ただ、いいブリーダーさんに出会うまでの手間を惜しまないことが大切。そしてブリーダーさんの所を事前にきっちり訪問し、どういう環境で親たちが育てられているのかを見て、そこで新たに生まれるのを待つんです。犬種や猫種を守ってきた方々だから、迎えた子の健康や行動の問題について相談に乗ってくれる安心感もあります」
雪を飼い始めたことで、さらにもう一歩、もう二歩と踏み出していきたいと考えている。自分には何ができるのか、様々な機会を模索しているという。
「まずは仕事をがんばることで、若い人たちに伝えていく機会を増やしたい。あとはもっと勉強して、経験も積んで、自分でできることの範囲を広げていきたい。たとえば学校で殺処分問題についての語り部をさせていただく、といったことができたらいいなと思っています」
(太田匡彦)
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