甘え方も処世術? 金属加工工場の猫は「工場長」
東京都大田区の金属加工工場。オイルのにおいが漂い、巨大な工作機械が並ぶ。作業が始まるとそれなりの騒音もするが、お気に入りの寝床で悠然と毛づくろいする1匹のネコがいる。「工場長」(オス、推定5歳)だ。
「近所のネコで、たまにふらっと現れる『ざぼん君』っていうのがいるんですけど、こいつはその子の天敵だったんです。若いときはしょっちゅう、けんかしては傷を作ってました。でも、あるときから、あまりけんかをしなくなって」と話すのは、工場長の部下(?)、鈴木毅さん(46歳)。やがて工場長は本格的に工場に居つくようになり、顔つきも少しずつ柔和になったという。
この工場の社長は、毅さんの兄、匠さん(47歳)。従業員は毅さんと工場長の“2人”。
「作業をしていると、すーっと足元に体をこすりつけてきて。かと思うとじっと手元を見ていたり。厳しい目つきで監視している様子は、まさに工場長です」。
とはいえ、社長はあくまで匠さん。工場長は中間管理職としての身の処し方も心得ている。
「兄には本当に、上手に甘えますね。少々手荒に抱き上げられて、モフられても、喉を鳴らして応えてます。それでまんまとおやつにありついているあたり、うまいなあ、と(笑)」
工場に住み込み
工場は職場であると同時に、工場長の住居でもある。
「冬でも昼間は工作機械の熱で、結構室内が暖かいんです。夜はペット用のホットカーペットをつけています」
食事はドライフード中心。
「水は新鮮なものじゃないと怒ります。たまのまたたびは、たしなむ程度」
悪酔いはしない。ごく短時間、ご機嫌にはなるが、適当なところで、さっとさめる。
「外にも半野良のネコが3匹いるんですが、工場長はここを守ってるつもりなんでしょうね。見かけると追い散らしてますよ」
なかなかに責任感のある工場長っぷりのようだが……。
「外の子もなついてるので、『警備員』として可愛がってます」
(AERA増刊「NyAERA」から)
(文:ライター・浅野裕見子、写真:品田裕美)
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