フレンチブルの苦しそうな鼻呼吸 手術で改善する?!

パティ動物病院の東皇記院長
パティ動物病院の東皇記院長

フレンチブルドッグの来院患者が多い動物病院に聞いた
鼻腔狭窄症と病気を考える上で欠かせない身体のつながり

 東京都文京区にある「パティ動物病院」は、短頭種の病気治療に力を入れており、フレンチブルドッグの来院患者は40パーセントをしめている。ご自身もイングリッシュブルドッグを飼っているという東院長に「鼻腔狭窄症」と「フレンチブルドッグの病気の考え方」について話をうかがった。


鼻腔狭窄症ってどんな病気?

 鼻腔狭窄症(びくうきょうさくしょう)は、短頭種特有の病気で、鼻の穴とその奥につづく「鼻腔」と呼ばれる空間が狭くなった状態のこと。鼻呼吸がスムーズにできないため、気管や肺に負担がかかり、新たな病気をまねいてしまうことも。眠っているときのイビキや散歩中のガーガー・ハーハーは、フレンチブルドッグならではの愛嬌のひとつだが、これは呼吸をする大変さをあらわしている。


鼻腔狭窄症の手術について

 それではここからはQ&A方式で、東院長がみなさんの不安を徹底解消!

①手術の目的は?

「ひと言でいえば、呼吸をしやすくするためです。人間でも鼻呼吸の大切さが言われていますが、フレンチブルドッグでも鼻でしっかり呼吸できることは、気管や肺に対する負担を減らすことにつながります。フレンチブルドッグの生活をより快適にしてくれる手術だと考えてください」

症例①:鼻の穴をしっかりあけるパターン
症例①:鼻の穴をしっかりあけるパターン

②どんな機械を使って手術を?

「熱のダメージが少ないCO2レーザーという機械を使って手術をします。鼻は切ると出血が多く、熱を加えるとダメージが強く出やすいため、リスクを最小限におさえる専門の機械をご用意しています」

症例②:鼻の穴をある程度あけるパターン
症例②:鼻の穴をある程度あけるパターン

③手術をすると見た目は変わる?

「鼻腔の前方に狭窄がある子は手前を処置するので、多少見た目が変わります。鼻腔の奥に狭窄がある子については、見た目が変わらない手術法が適応ですが、全体のバランスがあるので、手術法の最終的な判断は、麻酔をかけて処置をしながらになります。また、レーザーを使うため処置部分が一時的に赤くなることがありますが、通常は2週間~4週間で赤みはなくなります」

症例③:見た目がほとんど変わらないパターン
症例③:見た目がほとんど変わらないパターン

④手術をすれば、必ず呼吸をしやすくなる?

「大半の子は、手術をすれば呼吸をしやすくなります。症状が重度だった子は、手術をしたことで、よくニオイをかぐようになった・食事中苦しそうだったのが美味しそうに食べるようになった・鼻で呼吸をしながら食事ができるので、一度にたくさん食べられるようになったなどの報告もあります。ただし、少数ではありますが、他の問題(腫瘍や異物、骨の異常、歯の異常)が原因になって、呼吸状態の悪化が見られていた例もあったので、その場合は鼻と軟口蓋の手術だけではなく別の処置も必要になります」

⑤鼻の手術をするデメリット

「基本的に鼻の空気の通りを良くすることにマイナス面はありません。しかし、切った部分を縫合した糸にほこりが絡みつくことがあります。この場合は、糸を抜糸するか、糸が吸収されてくれれば、問題はなくなります。また、呼吸音(のどや鼻から出る音)は小さくなりますが、音の強弱や発生の仕方は、鼻の穴やのどを通る空気の量やスピードなどさまざまな要素で決まるため、手術前より音がするようになることもあるようです」

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