日本でここだけ 軽井沢でクマ対策犬「ベアドッグ」タマを訓練

田中純平さんは、タマと一緒に暮らす。「同じ群れとして、信頼関係が必要。命を預けていますから」=長野県軽井沢町
田中純平さんは、タマと一緒に暮らす。「同じ群れとして、信頼関係が必要。命を預けていますから」=長野県軽井沢町

 国内有数のリゾート地・長野県軽井沢町には、日本で唯一、ベアドッグと呼ばれるクマ対策犬を使った取り組みがある。野生動物調査やエコツアーを行う「ピッキオ」が町の委託を受ける。田中純平さん(43)は、2歳のベアドッグ「タマ」の飼育と訓練を行うハンドラーだ。

 タマはフィンランドとロシアの国境地帯が原産のカレリア犬。この犬種は勇敢で独立心が強い性格だ。適性検査で選抜された犬が、クマの匂いを察知する特殊な訓練を受ける。

 クマの出没情報を元に現場に急行し、ほえたてて森の奥に追い払う。痕跡を探して移動経路を特定することも得意だ。「ベアドッグでクマを傷つけずに人を守ることができる」と話す。

 町では、2000年前後から、別荘地でごみをあさるクマが問題になっていた。01年にピッキオに入った田中さんは、大学院で大型野生動物の研究を行い、北海道でヒグマ対策を行っていた。「クマは本来、人を避けながら生きている。餌付いてしまうと、人や人家に近づいてくる」。クマに開けられないよう細工したごみ箱を設置するとともに、追い払う手立てを探していたころ、米国にベアドッグ養成機関があることを知った。

 04年、初代ベアドッグ「ブレット」を導入。400回以上出動したが、13年4月に急性骨髄性白血病で急死してしまった。「家でも職場でもずっと一緒だった家族以上の存在。喪失感は大きかった」。ハンドラーをやめようと半年ほど悩んだ。しかし「やめれば日本でベアドッグを扱える人がいなくなる」と町の人から励まされた。寄付金も集まり、新たなベアドッグを導入することになった。

 2代目となるタマは「ブレット(弾丸)」にちなんで名付けられた。生後4カ月から田中さんがたびたび渡米し、犬舎に寝泊まりしながら訓練した。「匂いフェチ。警戒心が強く、どんな痕跡も逃さない」という高い能力の持ち主だ。もう1頭とともに15年10月に到着、今年5月からパトロールや普及活動を含め120回以上出動した。

 田中さんらの活動で、かつて100件以上あった公共ごみ箱の被害は09年以降、ほぼゼロになった。「クマは自然豊かな軽井沢の象徴。人間と共存できるようにするには気は抜けない」

(香取啓介)

◆活動はブログ(http://npopicchio.blog95.fc2.com/)で。ブレットを題材にした児童書『クマを追え!ブレット』(学研パブリッシング)も出ている。

朝日新聞
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