「明るくフラットに伝える」 殺処分ゼロめざし、セカオワが対談
人気バンド「SEKAI NO OWARI」が動物の殺処分ゼロを目指す「ブレーメン」プロジェクトを始めた。認定NPO法人「ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町)」と提携し、支援ソング「Hey Ho」や支援ライブの収益を寄付し、支援するという。セカオワのメンバーと、PWJの犬保護事業のリーダー大西純子さんに活動について語ってもらった。
(末尾に写真特集があります)
■感情的でなく、ほっとする音で
――なぜ殺処分ゼロの活動を始めたのですか。
Fukase 無駄な殺生はしないという父の影響だと思います。子どもの頃から関心がありました。動物は殺されたくはないだろうというのが原点で、自分たちで何かできたら、という考えにたどり着きました。
Saori デビューしたばかりの時にはやれることは少なかっただろうけど、今なら出来る。バンドとして考えてきたことを、今やろうと。
Fukase 大きいプロジェクトになるので、経験、知識がいる。PWJさんが犬の殺処分ゼロを実現したのがニュースになっていて、この人たちに会いに行こうと。
――広島県のPWJの施設に行かれた時の印象は。
Fukase 明るい場所だなって。大雨だったのに、明るさがにじみ出ていた。
Saori もっと悲しい空気が漂う場所かと想像していましたが、建物がきれいで、清潔感があって、赤や緑とかカラフルな色を使っていて、ステキな場所でした。
大西純子 いろいろな色を使っても犬にはわからない色もあるのですが、働く人も見に来る人も楽しい方が良いので。メインの犬舎は公園の中、いろいろな人が普通に遊びに来る場所の一角にあって、保護犬について知ってもらうきっかけになっています。
――連携はセカオワから提案したのですね。
Fukase はい。僕たちが力になれますかと聞いたら、なれると言っていただけたので、じゃあやろうと。CDがそう売れる時代ではないので、それよりファンを通じて、いろいろな人に殺処分の問題を知ってもらうのが目的です。僕らがきっかけになれたらなと思います。特別、愛犬家というわけではない、フラットな感じ。だからこそ、子どもたちに伝わることがあると思ったんです。
DJ LOVE 怒ったり悲しんだりしているのを見せても伝わらない。フラットに大人として伝えるのが一番いいと思います。
――若い層へ大きく訴求すると思いますが、反響は。
Saori すごくあります。興味を持ってくれた方々からは、ありがとう、ありがとうと。
Nakajin 支援公演の会場に募金箱を置いたら、置いてくれてありがとう、というメッセージもたくさん来ました。みんな、どういう形で参加したらいいのか分からないけど、こうして見える形にすると協力してくれるんだなと思いました。
DJ LOVE ライブ会場に支援グッズだけを買いに来たというファンも大勢いました。
■手を差し伸べるきっかけに、僕らがなれたら
――支援ソングは明るくポップですね。
Nakajin 感情的になって伝わるものではないし、感情的になってぶつかりを生むこともあると思いましたし。いまピンと来ない人もこの曲を聴いて愛してくれたら、何年後かに支援したいというタイミングがくるかもしれない。長く愛してもらうために、ほっとするような音作りを心がけました。歌詞も、熊本地震の支援グッズを販売した福岡公演のMCで、Fukaseが話した内容なんです。
Fukase 支援グッズをお知らせした後で、「無理に買わなくていいよ」と。人にはタイミングがあるし、それが今でなくてもいいって。そのまま書いた感じですね。
――押しつけにならないようにと。
Fukase 日本人らしさなのか、人が倒れていても、最初に助けるのは難しい。大丈夫ですか?と声をかけたいけど、恥ずかしいというか。だから、僕らがきっかけになれたらと思います。悪い意味ではなくて、このプロジェクトには深い思想はなく、シンプルに始めたものなので。曲の中でプロジェクトがさらっと伝わったらいいなと。あまり突き詰めて話すと、そこまで深く考えないとやっちゃいけないんだ、と子どもたちが思ってしまう。
Nakajin ハードルが高くなる。
大西 欧米に比べて、日本では誰かに自然に手を差し伸べる習慣や教育が少なくて、やるからには全てしなければ、という感覚が強いのだと思います。セカオワの皆さんとお話していると、そういう気負いを感じなかった。私たちの保護活動もフラットに、「何かおかしくない?」という所から始まったんです。
DJ LOVE 世の中の声には、たまに嫌なものがあります。ボランティアをするなら、全てなげうってすべきだというような風潮。それならあなたが捨て猫を全部保護すりゃいいじゃん、みたいな。それでは現実的ではないから絶対長続きしないでしょう。
Fukase 昔よりは減った気がする。前なら売名とか偽善とか言われたけど、震災以降、日本も変わってきたなと感じます。
大西 活動方法に対して批判はあったとしても、それによって何か目的が達成されるのであれば良いこと。それをみんなと一緒なら出来ると思いました。
――PWJは広島県内の殺処分対象の犬をすべて保護し、殺処分ゼロを実現していますが、すべての犬を新しい飼い主に譲渡できますか。
大西 人に慣れた犬は里親さんにもらっていただく。年をとったり健康状態が良くなかったりする犬もいるので、全部譲渡しようとは思っていません。ドイツでは譲渡率が90%と高いですが。
Fukase 国民の意識が高いから、それとも訓練の技術が高いからですか。
大西 両方ですね。保護犬という選択肢を知っているし、訓練するのも国家資格をもつプロです。私たちもそこを目指したい。欧米では子どものうちから動物のことを教わる。扱い方を知っていれば、責任を持った飼い方ができるようになる。日本の教育も変えていきたいです。
――資金集め、事業展開など、従来の動物愛護運動とは違って見えますが。
大西 PWJは国内外の紛争地域や大災害の緊急支援をしてきた団体で、動物の問題も一つの事業として位置づけています。事業実施のためには、必要な資金を集めて、必要な所で必要な働きをする。スタッフは支援のプロでなくてはいけない。動物が相手でも同じです。それで方法の一つとして「ふるさと納税」に行き着いたのですが、欧米の団体と比べると、予算はまだまだ少ない。日本でもNPOが解決しなければいけない問題は多く、神石高原町で活動しているのも過疎地域だから。過疎地域をどう再生していくかもプロジェクトの課題で、殺処分される犬猫がかわいそうだからという感情だけでやっていることではありません。日本社会の違和感を感じる仕組みを変えたいと思っています。
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