ペット保険、比べて賢く選ぼう 持病の有無などで判断を

グラフィック・西森万希子
グラフィック・西森万希子

 動物病院で高額な診療費を請求されて驚いた――。犬猫などのペットを飼うと、そんな経験をすることがあります。というわけで、ペット保険について調べてみました。

 人間と違い、動物病院での診療はすべて「自由診療」なので、ペットの診療費は飼い主が全額負担する。その額は2015年の平均で犬は5万7822円、猫は3万5749円(アニコム損害保険調べ)。

 こうした負担の軽減を目指すのがペット保険だ。各社が顧客獲得を目指して多様な商品を販売している。ファイナンシャルプランナーで「FPユニオンLabo」代表の宮越肇さんに協力してもらい、主なペット保険のうち、診療費の7割まで補償する商品を比較してみた。

 まずは、損害保険会社が運営する商品と少額短期保険会社が運営する商品にわけられる。少額短期の場合は破綻(はたん)した際に保険金が補償されないが、宮越さんは「1年更新の掛け捨てなのであまり影響はない」。大きな違いは、1日あたりの支払い限度額や利用できる日数に限度がある商品(日額日数限度制)なのか、1年あたりの支払い限度額だけが設けられている商品(年間限度額制)なのか。

 日額日数限度制の場合、たとえばアニコム損保の保険に加入して診療内容が通院のみだったとすると最大で20日分、年間で受け取れるのは計28万円だ。一方、年間限度額制のペット&ファミリー少額短期保険は通院だけでも70万円まで受け取れる。「アトピー性皮膚炎や内臓系疾患など入院や手術の必要がない持病を抱えている犬猫の飼い主にとっては、年間限度額制のほうが使いやすそう」と宮越さん。

 保険金の請求方法の違いも重要だ。一部の保険会社は動物病院と契約を結んでおり、契約病院の窓口で飼い主は診療費から保険金額を差し引いた分だけ支払えばいい。一方で保険会社が病院とそうした契約を結んでいない場合は、後から郵送などで保険会社に保険金を請求する。

 ほかにも商品ごとに大きな違いがある。例えばau損保の「ペットの保険」には、月額保険料が安めで通院補償がないタイプがある。また、ペットメディカルサポートの「PS保険」は車イス費用も補償されて年間限度額110万円。だが原則、疾患ごとに限度日数がある。例えば通院は20日。契約1年目に、ある疾患の診療で10日通院すると、それ以降は、原因が同じ疾患の通院なら残り分の10日までしか補償されない。使い切ると、原因が同じ疾患の通院は補償されなくなる。

「犬種や猫種によってかかりやすい疾患が異なる」(山根義久・動物臨床医学研究所理事長)ため、ペットにあわせた商品選びが大切だ。日本ペットオーナーズクラブ社長の野川亮輔さんはこう指摘する。「ペット購入時にペット店で加入をすすめられることもあるが、あわてないで。一緒に生活しながら、保険が必要かどうか、どういう商品が適切かを考えてほしい」

(太田匡彦)

<診療費、病院が独自に>
 動物病院での診療費に一律の料金制度はなく、病院が独自に診療費を決められる。日本獣医師会などが主導して診療費を統一してもよさそうなものだが、それは「一般論としては不当な取引制限にあたる」(公正取引委員会)ため、独占禁止法違反になってしまうという。旅先でペットが急に体調を崩して動物病院にかかったら、かかりつけの病院より高額の診療費を請求された、ということも起こりうる。


<加入率、まだ4~5%>
 日本におけるペット保険の加入率は現在はまだ4~5%にとどまっている。ペット保険各社は、加入率は今後、英国並みの20~30%程度まで伸びるとみており、楽天証券経済研究所の今中能夫アナリストは「成長余地の大きい市場であり、新規参入も増えている。今後は競争も激しくなるのではないか」と指摘する。
朝日新聞
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