保健所から救われ「看板犬」に ゴールデンのセシル、表情豊か
ゴールデンレトリバーのセシルは雌の6歳。飼い主に見放されて保健所に収容され、一度は人間不信に陥った。だが動物保護団体を経て、今やペットと人が一緒に住む「ペット共生マンション」の看板犬になった。県によると、保健所に持ち込まれ「処分」される犬の数は急速に減っているという。20日から26日までは動物愛護週間だ。
セシルは埼玉県久喜市吉羽1丁目で3年前から暮らす。現在の飼い主は高塚(こうつか)文彦さん(51)。脱サラ後、犬好きが高じて、ペットをしつけたり、預かったりする施設「OPPO」が入る「共生マンション」(15戸入居)を10年前から経営している。妻の準子さん(52)も大の犬好きだ。
セシルとの出会いは偶然が重なった。飼っていた黒のラブラドルレトリバーを亡くした直後。動物保護団体のホームページを見ていた準子さんが、新たな飼い主を求めているセシルを見つけた。愛犬を亡くした寂しさを癒やす「間抜けな顔」に気持ちが動いた。
しかし、実際のセシルは人にも、食べ物やおもちゃにも反応しない無表情な犬だった。前の飼い主だった高齢男性に厄介もの扱いされ、保健所に持ち込まれた経歴を持っていた。ストレスからか、尻の周囲や尾の毛がすべて抜けていた。
「私たちと暮らしてセシルは本当に幸せなのか。自問しながら接しました」と文彦さんは話す。仲間の犬とマンションのドッグランで走り回れるといった恵まれた環境の中で、健康を取り戻し表情豊かな「笑う犬」になった。しつけの訓練では、人の指示を理解する「上級者」という。
県動物指導センター(熊谷市)によると、県内の保健所に収容された犬は1985年の4万2千匹余りをピークに急速に減少し、2015年は1407匹。前年と比べても300匹減っている。うち、942匹は迷い犬などで飼い主に返還されたり、セシルのように譲渡されたりしており、やむなく処分される犬は大きく減っている。
「放し飼い」の減少や室内犬の増加で迷い犬が減り、不妊手術の普及や野犬捕獲の徹底が背景にあるという。収容された犬に対しては、新しい飼い主探しを進めるセンター認定の動物保護団体に預け、出会いの場を増やしている。
センターのホームページでも、様々な理由で動物を飼いきれなくなった飼い主の情報を掲載するなどして譲渡を後押ししている。「子犬なら順番待ちになるほど譲渡がうまく進んでいる。今後は、昨年も子猫が1千匹以上処分された猫対策が課題」(大沢浩一次長)という。
(高橋町彰)
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