盲導犬連れ男性の転落死、視覚障害者団体が地下鉄駅を視察
東京都港区の東京メトロ銀座線青山一丁目駅のホームで15日、盲導犬を連れて歩いていて転落し、亡くなった品田直人さん(55)はこの春、東京に引っ越してきたばかりだった。敬虔(けいけん)なクリスチャン。北海道で幼稚園長を務め、「一人で歩ける範囲を広げたい」と盲導犬とともに活発に活動していた。
父も牧師のクリスチャン一家だった。宣教師として10年ほどフィリピンで働いたが滞在中、目の病気を患い、20年ほど前に帰国。北海道で高校の教諭を務めた後、2006年から江別市の元野幌(もとのっぽろ)めぐみ幼稚園で園長として働き始めた。
「園長になったときから視野がトイレットペーパーの芯からのぞいたくらいしかなかったそうです」。現在の園長、小原愛香さん(43)は話す。園児らには「先生も気をつけるけど、ぶつかったらごめんね」と説明していたという。視野はさらに狭くなり、約2年半後に園長を退いたが、併設の学童保育で子どもたちの世話を続け、卒業する園児にあてた文集に「やさしいこころをわすれないでくださいね」と記した。
盲導犬を利用するようになったのは11年。事故の時も一緒にいた「ワッフル号」とは14年からペアを組んだ。犬を訓練した北海道盲導犬協会の和田孝文訓練所長(50)は「品田さんとワッフル号はしっかりコミュニケーションが取れていた」と話す。
妻と4人の子どもがいた。今春、娘の大学進学に合わせて東京に引っ越し、障害者の自立を支援する会社で働いていた。事故が起きたのは品田さんの55回目の誕生日だった。17日の葬儀に参列した知人女性(54)は「きっと天国でお会いできると思います」と目を潤ませた。
(力丸祥子、光墨祥吾)
■視覚障害者団体、現場の駅を視察
東京視覚障害者協会の会員が18日、事故が起きた銀座線青山一丁目駅ホームを視察した。再発防止の提言をまとめ、東京メトロや国に要望書を提出する。
4人の会員が盲導犬を連れたり白杖(はくじょう)をついたりして現場のホームを歩いた。山城完治さん(60)は「ホームが狭く、点字ブロック上に柱がある。音の反響が大きく、周囲の足音や気配を感じにくい。早急にホームドアを設置してほしい」。盲導犬を連れた田中章治さん(70)は「目の不自由な人を見たら気にかけ、積極的に声をかけて」と訴えた。
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