愛犬家向け「アンチエイジング・エリア」駒沢公園近くに出現

大野さんは、愛犬2匹をひざに抱えてカプセルに入った=東京都世田谷区
大野さんは、愛犬2匹をひざに抱えてカプセルに入った=東京都世田谷区

 愛犬により長く健康でいてほしい、最後まで面倒を見たい――そんな飼い主の願いをかなえるアンチエイジング・スポットが東京・駒沢公園通りに出現している。もともと、散歩に来る愛犬家向けの店舗が軒を連ねる「ワンちゃんストリート」だったが、最近は、健康維持や介護を見据えたサービスやグッズを扱う店が増えている。「飼い主と愛犬が一緒に体験できる」のがトレンドのようだ。

 

(末尾にフォトギャラリーがあります)

 

 東京都内在住の大野千尋さんは6月下旬、愛犬2匹を連れて小型犬用のアパレル店「アトリエ・デ・F.R.L」(同世田谷区)に来た。お目当ては「酸素カプセル」だ。

 

 酸素カプセルは、酸素濃度の高い密閉空間で過ごすことで、血中酸素量を増やす。寝不足などから来る疲労の回復に効果があるとされる。フィットネスクラブや温泉施設でも最近はよく目にするようになったが、この店では人用のカプセルに人と小型犬が一緒に入れる。

 

 大野さんは、トイプードルの親子のこなつ(7歳、雌)とみるく(5歳、同)をひざに抱え、縦置きのカプセルの中の椅子に座った。内部は、手足を伸ばせる十分な広さがある。スマホを見ているうちに、あっという間に20分経過。2匹がほえることもなく施術が終わった。

 

 もともと、愛犬用の服を買うために来店していた。酸素カプセルは、導入後に早速利用してみた。自身も頭がすっきりして肩こりが解消したという。

 

「こなつとみるくもカプセルに入った夜は、体を思い切り動かした日と同じように、ぐっすり眠ってくれるんです」。最近は、雨の日や猛暑日など、散歩に行けない日によく利用する。

 

 ちなみに、同店のカプセルの場合、小型犬が20~30分入ると、有酸素運動を2時間したときと同じ量の酸素を摂取できるそうだ。また、カプセル内は気圧が上がるため、人の場合は耳抜きをしないと頭が痛くなるが、犬は耳の構造上、その必要がないという。

 

 同店が酸素カプセルを最初に導入したのは5年前だ。当初は小さなドーム形の犬専用機だった。だが、中に入れた犬が怖がって出たがり、扉をこじ開けようとして肉球を傷つけたことがあった。「犬に元気になってもらうためのサービスが、それでは本末転倒。飼い主も愛犬も安心して利用できる環境を整えたかった」と、オーナーの松並雅彦さん(61)。飼い主と犬が一緒に入れることを重視し、3年半前に今の機械に替えた。

 

「愛犬と一緒の体験」というのが、最近のキーワードらしい。「愛犬と一緒にトレーニング」が人気なのは、犬グッズ専門店「Dog Life Design」だ。バランスボール・エクササイズの教室を、月に1度ほど開いている。

 

 東京都世田谷区の細川冨美子さんは、行ける月には必ず参加しているという。愛犬はキャバリアの雄の太郎(10歳)。年齢を重ねて、いつ体調を崩すか分からない。その予防もしたかったし、万一要介護になった時には、自分が元気でないと苦労するとも思った。一緒にできる健康維持法を探していた。

 

 教室は1時間で、飼い主は一般的な球体のバランスボールを、犬は特別なピーナツ型のものを使う。インナーマッスルを鍛え、有酸素運動やストレッチをする。激しい動きはないが、飼い主は運動不足が解消され、愛犬も筋力向上で寝たきり予防が期待できるという。

 

 運動が苦手な人でも、抵抗なく始められるような内容だ。講師の寺井聖恵さんが考えた。寺井さんは犬の介護士で、シニアドッグケアアドバイザーでもある。日常的に使わない筋肉を動かす運動を組み込んでいるため、「翌日は心地よい筋肉痛が出る」(細川さん)と、飼い主にも好評だ。
同店はほかに愛犬のしつけ方教室や、愛犬の服の手作り教室なども企画している。犬用のフードやアパレルも扱っている。

 

小椋さんが開発した「抱っこハニカムマット」。こうして運べば、担架代わりにもなる。2万1000円(税別)
小椋さんが開発した「抱っこハニカムマット」。こうして運べば、担架代わりにもなる。2万1000円(税別)

 

 だがどれだけ健康に気を使っても、犬も人もいつか必ず老いる。そこで頼りになりそうなのが、レトリバー専門の雑貨店「アイアンバロン」だ。大型犬用の介護用品や看護用品を数多く取りそろえる。独りで歩くのが難しくなってきた時に支えるための補助ハーネスや、寝たきりになった大型犬を乗せて運ぶための介護用カートなどもある。

 

 開店して25年ほど、取扱商品は看板犬たちの成長に合わせて少しずつ変わってきた。開店当初はアパレルやおもちゃが中心だったが、看板犬たちの高齢化とともに介助用品も扱うように。特にレトリバーは、年を取ると骨や関節が変形し、起き上がるのが難しくなる。病気で寝たきりになることもある。「大型犬が老後を快適に過ごせて、しかも介護に悩む飼い主の手助けになる商品を扱いたいと思った」と、オーナーの小椋祐子さんは振り返る。

 

 例えば、店オリジナルの介護用品「抱っこハニカムマット」は、小椋さんが考えた。クッション性や通気性に優れるハニカム素材のマットに、持ち手のひもがついている。マットに大型犬を伏せさせてくるめば、女性1人でも運べる。持ち手を前後2人で持てば簡易担架になる。耐荷重は35キロ。

 

 大型犬をそのまま抱っこすると落としそうで不安だし、車の乗降や病院の狭い通路での移動も難しい。「実体験を基に、素材選びからサイズまで、こだわって作りました」と小椋さんは話す。
店では、現在の看板犬でゴールデンレトリバーの雌の「もいもい」(10歳)にも会える。

 

(田代くるみ)

 

■アトリエ・デ・F.R.L
住所:東京都世田谷区深沢6-2-17 FUKASAWA PARK SIDE 1F
電話:03-5752-7112
営業時間:12時~19時
定休日:月曜(祝日の場合は翌火曜)
※酸素カプセルは20分1080円
詳細はhttp://www.frl.co.jp/
■Dog Life Design
住所:同区駒沢5-24-5
電話:03-5433-2988
営業時間:平日11時~19時30分、土日10時~19時30分
定休日:不定休
http://doglifedesign.com/
※バランスボール・エクササイズは次回は8月26日。10時30分~11時30分、13時~14時の2回。受講料は3千円。要予約。
■アイアンバロン
住所:同区駒沢5-19-10
電話:03-5752-7117
営業時間:11時~19時
定休日:火曜・水曜
http://www.retriever.org/
sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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